ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
ブラン家の日常
リアムとミシェルは手をつなぎながら部屋に入ってきた。
二人はお目当ての姉を確認すると、顔を綻ばせながらルイーズに駆け寄ってきた。
「姉上、お帰りなさい」
「ただいま、リアム。ミシェルの面倒をみてくれてありがとう」
「いえ、ミシェルはいい子にしていたので大丈夫です」
ルイーズはリアムに微笑みながら頷いた。 リアムからミシェルに顔を向け、ミシェルの目の高さに合わせるように屈んでから話しかけた。
「ミシェルはおにいさまの言うことをきちんと聞けたかな?」
「うんっ! にいたまのゆうことちゃんときいたよ。ねえたまのこと、おへやでまってた」
「そう、偉かったわね。今日はお部屋に行けなくてごめんね、ミシェル」
「うん、いいよ」
かわいい妹から許しをもらい、ルイーズはミシェルの頭を優しく撫でた。
♢
三人は、ルイーズの部屋を出て、母親の部屋に向かっていた。
夕食前の時間は、母親の部屋で一日の出来事を話すことが日課になっている。
今日はいつもより遅い。そのため、話せる時間は短くなってしまった。
母親のエイミーは、三年前の出産で出血がひどく、二年前まではベッドの住人だった。 しかし最近では、お茶会やパーティーに参加して、貴族夫人の義務を果たしている。
だか、会に参加した翌日には、またベッドの住人となる。ルイーズは、その姿を見るといつも悲しい気持ちになる。
回復の兆しは見えてきたが、まだまだ症状は不安定だ。できることなら、全快するまでゆっくりしてほしい。とは言っても、貴族夫人としてはそうも言ってはいられないようだ。弟のリアムがブラン子爵を継承するまでは、社交活動を続けるのだろう。
エイミーの部屋につくと、ノックをしてから声を掛ける。
「お母様、ルイーズです」
「リアムです」
「ミシェルでしゅ!」
「三人とも入って」
部屋の中からは優しい声が聞こえてきた。