アイビーは私を放さない
それだけでも辛かったのに、さらに辛い思いをすることになった。私は一度もヒートが来なかった。私はアルファのフェロモンを感じることができず、ヒートも来ない不完全オメガだった。

『ヒートが一度も来ないというのもダメなことなんだ。一度、薬を使ってヒートを起こさせよう』

オメガの定期検診(オメガは定期的な検診が義務付けられている)で先生にそう言われ、高校生の頃にヒートを強制的に引き起こす薬を試したことがある。でもヒートは来なかった。ベータなんじゃないかと考えたこともあったけど、バース性に間違いはない。

『お姉ちゃんってバース性が劣っているオメガなのに、その中でも劣ってるんだね』

妹に言われた言葉が何よりもショックだった。だから、私は日本ではなくアメリカに進学することにした。まだアメリカの方がバース性に対する理解がある。とは言っても、ヒートの来ない私はみんなにはベータって言ってるんだけど。

いつも通り講義を終えて、私は大学を出てバイト先へと向かう。私がバイトをしているのは、老夫婦が経営しているお花屋さんだ。
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