Anonymous〜この世界にいない君へ〜
手首にはまだ手錠による拘束があるものの、縄で縛り付けられていた時よりは体は楽である。アノニマスが軽く体を伸ばしていると、男は低い声で言った。

「処刑場へ向かうぞ」

アノニマスは口を開く。

「お前があたしを殺すのか?」

「状況による。尾崎の手が空けば尾崎が、俺の手が空けば俺がやる」

「そうか。……お前の名は?あたしを殺す奴の名前は聞いておきたい」

「レオポルト・カフカ」

外国人ーーーレオポルトは自身の名を名乗るとアノニマスの腕を掴んで強引に立ち上がらせる。その力は強く、アノニマスは抵抗する間さえなかった。

「行くぞ」

レオポルトは氷のように冷え切った目でアノニマスを睨むように見つめ、歩き出す。レオポルトの腕によって拘束されたアノニマスは、強制的に歩かされた。

(処刑か……)

アノニマスの瞳の奥で、ある感情が揺らめいた。



目の前に現れた建物に、紫月たちは足を一瞬止めてしまった。まるで西洋を思わせるような煉瓦造りの家だった。おとぎ話に出てくる家のような煙突があり、今は雑草だらけの庭には錆びれたブランコやベンチがあった。
< 174 / 215 >

この作品をシェア

pagetop