眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛



「それでこうしてのこのこと俺たちの前に姿を現したってのか」
「探す手間が省けたな」

 ローラはヴェルデとフェインに守られるようにして、イヴとイヴの兄二人の前にいた。

「どうして……どうしてこんな危ない目を!あんたもどうして許したんだこんなこと!」

 イヴが怒ったようにヴェルデに言うと、ヴェルデは苦虫を嚙み潰したような顔でイヴを見る。

「ヴェルデ様は悪くないんです。私が望んだことですから。だからヴェルデ様を責めないでください」

 両手を胸の前で握り締め、ローラは懇願するようにイヴへ言うと、イヴは眉を顰めて視線を逸らす。

「どうか私の話を聞いてくださいませんか。あなたたちが私を狙う理由はイヴから聞きました。あなたたちはずっとイライザの呪いのような言葉に縛り付けられている。でも、もう解放されてほしいんです。長いしがらみから解放されて、自分自身のために生きてほしいんです」

 ローラの言葉に、イヴの兄の一人が顔をゆがませた。

「解放されてほしい?だったら今ここで死んでくれよ。あんたが死んでくれれば俺たちは解放される。あんたのせいで俺たちの先祖がどれだけ悲惨な思いをして暮らしてきたと思う?俺たちもだよ。本来なら王家でぬくぬくと幸せに暮らせたはずなのに、地面を這いつくばってなんとか生きてる。あんたさえいなければこんなみじめな生き方はしなくて済んだんだ」

「ローラのせいだ?ふざけるな、お前たちの先祖の自業自得だろ!お前たちだってその呪縛から逃れてきちんと自分を生きていればもっと違う、新しい世界があったかもしれないのに、それをしなかっただけだろ!ローラが目覚める前も、目覚めた後もどれだけの絶望を抱えて生きていたと思うんだ!」

 ヴェルデが怒号を飛ばす。

「ローラ、やっぱり話をしても無駄だったろ。まともなのはイヴだけだ。こんな奴ら今ここで駆逐した方がいい」

 パチッと火花が飛び、ヴェルデの周りに魔力が浮かび上がる。一触即発かと思ったその時。

「ははは、相変わらずすごい魔力ですね、ヴェルデ」

 突然、イヴの兄たちの背後から聞き慣れない声がした。
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