百日後に離婚予定のはずが、溺愛モードに入りました!
「笑うところじゃないんだけどな」
「ごめんなさい。見目麗しい方にも悩みがあるんだな、と思って」

 私の言い訳に彼は苦笑する。
「そりゃあるさ、人間なんだから」
「でも、外見が恵まれている方はすべて恵まれているように錯覚してしまうんですよね」
「どうしてそんな錯覚を?」
 彼の疑問に、私は首をひねった。

「わかりません。でも女性が恵まれた方と結ばれたいと願うのは自然ではないですか? 望んで不幸になりたい方はいらっしゃいませんし、やがて生まれる子どもにも幸せになってもらいたいでしょうから」
「そんなものかな」

「殿方も美しい方がお好きでしょう?」
「美醜はささいなことだよ。いくら美しくても無教養だったり性格が悪かったりしたら最悪だ」

「それらを見極めるための夜会なのでは?」
「……なるほどね。そう考えたことはなかった。いつもめんどくさいばかりで」
 微笑する彼はなんだかうれしそうで、私は不思議に思った。

「今までの夜会で一番まともな会話ができた。私はアラン・トーラス。ご令嬢、お名前をお聞きしても?」
「マリアン・ディノアです」

「マリアン嬢。素敵な名だ。おひとりでいらしたのですか?」
「父と来たのですが、お仕事の話をしていらしたので……」
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