海よりも深くて波よりも透明
だが、ちょうどそのタイミングで、悠星が黙って自分の履いてたサンダルを脱いで愛姫のところに放った。



悠星、まじかお前…。



「…what is this?(これ何?)」



驚いた愛姫が、思わず英語で悠星に聞く。



「それ履いていいから。俺車ん中で待ってるわ。夏葉くん、キーちょうだい」



言われるがまま、悠星に車の鍵を渡した。



悠星はそのまま裸足で俺の車に乗り込んでいった。



愛姫は黙って悠星のビーサンを履いて。



愛姫の小さい足に対して悠星のビーサンは巨人みたいだ。



「…アイツ、意外とやさしい?」



穂風につぶやくように聞いた。



「悠星くんは、空気読めないだけで普通に良い人だよね」

「…」



愛姫が、一瞬黙ってから軽く肩をすくめた。



悠星への印象がちょっと変わったらしい…。



それからコンビニで買い物を済ませ、車に戻った。



今日は悠星の運転で帰るので、運転席には悠星。



「やった! 夏葉とくっつけるから夏葉と一緒に後部座席すわる~!」



穂風のその言葉で、俺と穂風は後ろ、愛姫は助手席に乗り込んだ。



愛姫、悠星の隣で大丈夫か…?



一瞬だけ心配したけど、愛姫はおとなしく助手席に座ってる。



よかった…。



俺の車は4人で乗るにはめちゃくちゃ狭い。



穂風とかなり密着する形に。



穂風は楽しそうに俺の顔を見てて。



「夏葉の車で夏葉と一緒に後部座席座ってるの新鮮だね」



穂風がはしゃいでる。



可愛いから手を繋いでやろう。



隣の穂風の手を俺の方に引き寄せて絡ませると、もっと嬉しそうな顔をした。



本当ガキ…。



いちゃついてたら、一番近い花枝さんの家に到着。



「これ、アリガト…」



愛姫が一度ビーサンで家に入ってから靴を履いて戻って、悠星にビーサンを返した。



「ん、またな」



悠星が軽く返事をしてから車を出発させた。
< 150 / 328 >

この作品をシェア

pagetop