海よりも深くて波よりも透明
やば…。



周りのみんなは不思議そう。



あたしは気づかないふりをして顔を逸らした。



海に背を向けて網の上に残った肉や野菜を消費する。



でも、段々と悠星くんが近づいてくる気配がした。



「えっ、なんかあのサーファーこっち来るんだけど…」

「なに? だれか知り合い?」



悠星くん、お願いだからあっち行って…。



でも、空気の読めない悠星くんにはあたしの願いもむなしく。



「穂風、こんなとこで何やってんの?」



声かけられちゃったよ…。



あたしは仕方なくぎこちない顔で振り向く。



「えー、悠星くんだーキヅカナカッター」



苦笑いで棒読み。



でも悠星くんは全く気づいてない。



「穂風ちゃん、知り合いだったんだ!」



先輩たちが聞いてくる。



「あ、まあ…はい」

「なんの知り合い?」



ん~~~…。



あたしがサーファーって、言う?



そしたら、あたしの今置かれてる状況についても説明しないといけない?



なんかあたし、まだつまらないプライドにこだわってるんだな…。



そんな自分にがっかりした。



あたしは言いよどんでしまう。



そのとき、あたしのよく聞き慣れた声が聞こえた。



「おい悠星、大学生に混じって何してんだよ」



夏葉の声だ…。



驚いて声の方を見ると、同じタイミングでこっちを見た夏葉と目が合った。



夏葉が驚いた顔をする。



なんかちょっと可愛い。



あっ…なんか、心が軽くなった気がした。



夏葉を見た瞬間に。



あたしの居場所は海なんだって、なんだかそう思えて、何も隠すことはない気がした。
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