海よりも深くて波よりも透明
「(でも忘れられないんだろ?)」



リアムが言った。



愛姫がうなずく。



「(忘れたいのか?)」

「(分かんない…。分かんないけど、とにかく苦しい…)」

「(じゃあ一回ほかの奴と寝てみたら? 俺とか)」



リアムの発言に愛姫がリアムの肩を殴った。



「(リアムとなんて絶対いや)」

「(ひでえな…)」



ずっとあんたが悪いぞ…。



愛姫がリアムを無視してつぶやいた。



「(今だって会いたくてしょうがない…)」

「(今からだって、まだ間に合うかもしれねえぞ?)」



悠星も愛姫も、お互いのことがまだ好きなのに。



2人とも別れを引きずってる。



一緒にいる道だってまだいくらでもありそうなのに…。



だけど、愛姫は静かに首を横に振った。



「(それでも、先が見えないまま付き合い続けるのは不安だよ…)」



こればっかりは難しい問題だ…。



それから愛姫の話をしばらく聞き続けた。



気づいたら夜遅くになっていて、愛姫を家に送り届けてからリアムと2人で帰る。



「(あんな引きずるなら別れなきゃいいのになー)」

「(そんな簡単なもんじゃないっしょ…)」

「(俺には分かんね。色んな男と寝たらすぐ忘れるだろ)」



あんたには分かんねえだろうよ…。



と思ったけど黙ってた。



そんなんだから色んな女に恨まれんだろ…。
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