海よりも深くて波よりも透明
いつもそんなに恋愛には本気になれない。



だから、これも一時的な想いだと思うし、気持ちが冷めるまでの辛抱だ。



俺の言葉に、穂風は明らかな不満顔。



「ガキじゃないし」

「ガキだろ」

「ガキじゃない!」

「俺からしてみたら、十~分にガキです」



俺がそう言ったら、黙ってすねを蹴られた。



いってえ!



信じらんねえ!



これはぜってーすぐ冷めるわ!



今まで付き合ってきた女で暴力振るうやつはいなかったぞ…。



ナイナイ…。



2人を置いて家に帰った。



はあ…。



仕事しよ。



ウエットスーツを脱いでシャワーを浴びる。



シャワーを浴びてる時間は、自然と色々なことを考える。



仕事について考えていたら、脳裏に穂風の波乗りの映像がよぎった。



次に、さっき蹴られたことを思い出す。



マジありえねえ…。



だが、それを思い出したとき、自然と笑っている自分に気が付いた 。



「…」



あー…、くそ…。



振り払うようにして頭の水滴を飛ばす。



シャワーから上がって髪の毛を拭きつつ机に座った。



俺は仕事をする!



仕事だ仕事…。



机のパソコンと向き合い、写真の調整や編集をしたり、仕事先の人とメールでやり取りをしたり。



ひと段落ついて窓の外を見ると、陽がほとんど落ちている。



休憩するか…。



気分転換に、カメラを持って外に出た。



海沿い歩こう。



あいつらももう帰ってんだろ。



そう思いながら、海岸に向けてカメラを構えた。
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