海よりも深くて波よりも透明
めちゃくちゃ良い波が来た。



肩(※波のサイズのことで、身長の肩くらい。だいたい1.2メートルくらい)はある。



パドルをしてスッと波に乗る。



板の端から端を歩いて板の上を移動。



波と会話するみたいに、丁寧に、丁寧に。



乗っていたら、絶対に勝つとか、そんなことも全部忘れた。



ただ楽しいだけだ。



あたしも海の一部みたいな、そんな感覚。



あっという間に時間が終わった。



かなり良い出来…。



海から上がったら、一度休憩タイム。



夏葉のところに視線をやったら、愛姫と話してるのが視界に飛び込んできた。



まじでほんっとにモヤッモヤする!



無理!



小走りで2人に近づいた。



「(うわ、これもう手に入らねえやつじゃん、すげえ)」

「(同じシリーズで別のフィン、たくさんおばあちゃんの家にあるよ)」



サーフボードのフィンを見ながらなんか会話してるのが聞こえる。



「(まじ? すげえな)」

「(見に来る?)」

「(いいの? 行きてえ)」



はあ!?



家…?



2人でそんな約束してほしくない…。



さっきまでのモヤモヤがマックスになった。



心が落ち着かない。



夏葉がこっちに気がついた。



「穂風」

「2人ともお疲れ~」

「さっきの波乗り、すげえ良かったな」



愛姫はニコニコした顔。



愛姫も夏葉のこと好きだったりしないよね…?



「穂風もあたしのグランマの家、行く?」



愛姫がニコニコした顔のままあたしに聞いた。



あたしも誘うってことは、夏葉のこと別に好きなわけじゃない…?



でもどっちにしろ、愛姫と夏葉が2人で約束するとか想像しただけで無理だ。



ん~、恋って苦しい!



「行く!」



勢いよくそう返事した。
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