海よりも深くて波よりも透明
敷地内の庭園に出て、建物の裏側の小道を抜けた。



誰もいない、しんとした小さな花園。



いろんな色の花がかわいらしく咲き乱れてる。



夏葉は興味深そうに周りを見渡す。



1番奥のところにベンチがあるんだ。



夏葉の手を引いてベンチに座った。



「すげえな」

「へへ、穴場なんだ」

「ここなら何してもバレねえな」

「何してもって…」



夏葉はふっと笑って、あたしのおでこにキスした。



あ、なんかこの感じ久しぶり…。



今度はあたしから夏葉の唇に一瞬キス。



幸せ…。



「ドレス、まじ似合ってる」

「可愛いでしょ」



夏葉があたしの腕に手を回して引き寄せた。



ノースリーブのドレス。



夏葉の手が肌に触れている。



二人の距離がぐっと近くなった。



「化粧もしてんじゃん。これ、グロス?」



そう言ってあたしの唇あたりをなぞる。



なんかぞくぞくする…。



そして、また食べられるようなキス…。



しばらくキスしてから夏葉はゆっくりと顔を離した。



「調教されてる…」

「…何の話?」



リアから聞いた話を夏葉にした。



夏葉はそれを聞いて爆笑。



そのあとに、あたしのおでこにまた一瞬だけキスを落とす。



「やっぱ調教してんのかもな」

「…」

「穂風が俺から離れらんねえように?」



夏葉がそう言って、もう一度さっきと同じようにキスした。



続けていたら、こじ開けるように夏葉の舌が入ってきて。



はじめての感覚にびっくりするあたし。
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