薬師見習いの恋
 ぶぎい、ぶぎい、と怒りの鳴き声とともに、はっはっはっと、魔獣の荒い息遣いが響き、イチイの木が揺れてがさがさと鳴る。

「でかした!」
 フロランは左手で剣をかまえて魔獣を刺そうとするが、暴れる魔獣が危険でなかなか近づけない。

 ロニーはすぐさま弓矢をつがえ、射る。
 近距離で射られた矢は大きな的となった魔獣に深く突き刺さる。

「ぶぎいい!」
 痛みに魔獣が叫び、暴れる。
 イチイの木は大きく揺れたが、折れることはない。
 だが、古縄がその力に耐えきれずミシミシとちぎれ始める。

「ぶぎい、ぶぎいいい!」
 魔獣は咆哮と共にさらに暴れ回る。

「まずい」
 ロニーはさらに矢をつがえ、素早く射る。
 巨体に刺さりはするものの、分厚い肉に阻まれて急所には到達できない。
 魔獣はさらに暴れ、縄は千切れそうに細くなる。

「くそ!」
 フロランはなんとか剣を突き立てるが、うまく力が入らずに浅く傷をつけるだけだった。
 ロニーはとにかく矢を射かける。

 魔獣の体にはルーの矢が何本も刺さり、血が大地へと零れる。
 それでも致命傷にはいたらず、魔獣にとってはかすり傷かもしれない。

 なにか、この細い矢でも致命傷を与えられないか。
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