薬師見習いの恋
「この威力では無理か……」
 ロニーはさらに胴体を目掛けて矢を射かける。
 矢が刺さり、魔獣が大きく咆哮して突進をかける。

 その先にはマリーベルがいる。
 マリーベルは硬直した。
 ルーのそばにいれば魔獣は寄ってこないと思っていたのに、怒り狂った魔獣はルーのことすら忘れているようだ。

「マリー! 逃げて!」
 ロニーが叫ぶがマリーベルは足がすくんで動けない。
 それでも必死によろよろと歩き出す。走っているつもりなのに、足がいうことを聞かなくて、おもりをつけられたかのようにうまく進めない。

「ぶぎいいい!」
 一際大きな咆哮が真後ろで響いた。空気が震え、マリーベルの肌までもが震えた。
 もうダメだ。
 マリーベルがあきらめかけたそのとき。

「ぶぎいいい!」
 再度、魔物が咆哮した。だが、その響き方が違う。
 マリーベルは思わず振り返り、その様子に叫んだ。

「かかった!」
 無駄かもしれないと思いながら作ったその罠に、魔獣が足をとられていた。
 イチイの木が折れないのが不思議なくらいに激しくしなっている。魔獣は暴れるが縄がくいこみ、一定の距離しか動けない。
< 128 / 162 >

この作品をシェア

pagetop