薬師見習いの恋
「その方は銀色の髪をしていますか?」
「知っているのか!? 瞳はブルーベルのような青紫だ」

「……よく似ている方が村にいます」
「そうか! その男のところに案内してくれないか」

「はい」
「ありがとう、助かる!」
 エルベラータの声は喜びに満ちていた。

 マリーベルは自分に絶望した。
 なんで言ってしまったんだろう。
 だけど、黙っているなんて不誠実だ。そんなこと、神がお許しになるはずがない。

 田舎の住民にありがちなことではあるが、彼女もまた信心深く、清く正しくあろうと心がけていた。それが日常を幸せにしてくれるのだと信じて。

 村に着いたマリーベルはそのまま村を横断してロニーの住居へと三人を導く。
「こんにちは、マリー、そちらは?」
 途中、村の人に話しかけられた。

「旅の方です」
 短く答えて、マリーは会話を打ち切る。
 村人はそれ以上話すことができずに戸惑いながら四人を見送る。

 なんどかそのような会話を繰り返し、ロニーの住む家に着いた。
 ノックをすると、ロニーはすぐに扉を開けてくれた。
< 23 / 162 >

この作品をシェア

pagetop