薬師見習いの恋
女性はエルベラータとだけ名乗った。一緒にいる男性は三十代と思しき金髪の男がフロラン・ポーエル・ティアスで、四十代らしき茶髪の男がモリス・マルク・バティスンという。ふたりとも精悍な顔つきをしていた。
マリーベルが先導して村に向かう。
道中、エルベラータは快活におしゃべりをした。
「ロナルシオとは友人でね。彼は薬師をしていたんだが、あるとき、薬を探しに行くと言って出て行ってそれっきりなんだ。手紙はちょくちょく来ていたが、春にナスタール村から来た便りが最後でね。心配になって探しに来たんだ」
「……仲がいいのですか?」
「そこそこね」
エルベラータの美しい笑顔に、マリーベルの胸がぎゅっと痛んだ。
ここは王都から離れている。馬を使ってもそれなりに時間がかかるだろう、それでも探しに来るほど親密なのだろうに、そこそこ、という。その言葉がさらにふたりの親密さを表しているように思えてならない。友人と言ってはいるが、実際はそれ以上の仲ではないだろうか。
ロニーのことを教えるべきか否か。
マリーベルの胸に葛藤が湧く。
わざわざ探しに来たのだ、会えて良かった、で帰るわけはないだろう。
だが、どのみち村に着けば彼女の知るところになる。たとえ彼女らがロニーを連れ去る非情な使者だとしても、困っていると言う彼女らを放置して村に逃げ帰ることはマリーベルにはできそうもない。