The previous night of the world revolution
…正直言って、俺は油断していた。
それは認める。
けれど、完全に気を緩ませていた訳ではなかった。
そんな生半可な訓練は受けてきていない。
その男が拳銃を取り出して、ローゼリア女王に向けようとしたときには既に、俺は左手の剣を抜いていた。
生憎ながら、俺の持ち味はその神速にあるのだ。
躊躇いなどなかった。相手がクリュセイス家の当主であろうと、女王の前で拳銃を持ち出した者に、容赦などする必要はない。
拳銃を向けようとしたその腕ごと、両断するつもりだった。
俺は女王を庇うように、彼女の前に出た。
しかし。
左手に持った剣が、男の腕に触れそうになった…瞬間。
「駄目!」
ローゼリア女王は、そう叫んだ。
その言葉に、俺は一瞬怯んでしまった。
何せ俺は、昔から…女王の命令に従い、彼女の意のままに生きるように、洗脳されてきたのだから。
その彼女の言葉に、俺は反応してしまったのだ。
一瞬動きが止まってしまった。
その一瞬が大きかった。
男はこちらに向けた黒い筒の引き金を、無我夢中で引き絞った。
乾いたような発砲音が響くと同時に、俺は動いていた。
腕を切り落とす代わりに、渾身の回し蹴りを食らわせてやった。
相手がローゼリア女王の従兄弟だろうが、もうそんなことは関係ない。
俺の渾身の蹴りを受けたゼフィランシアは、面白いほど見事に吹っ飛んだが。
生憎、相当分が悪い痛み分けに終わった。
回し蹴りをクリーンヒットさせた直後、俺は膝をついてしまった。
左の脇腹が、焼けるような痛みを発していた。
俺は女王を庇うように立っていた。ゼフィランシアが女王に向けて発砲すれば、そりゃ当然俺に当たる。
幸いなことに弾は抜けているが、出血はかなりのものだった。
蹴り飛ばされたゼフィランシアは、一発で気絶したらしく、ぴくりとも動かなかった。
何にせよ女王は守り抜いた。それだけでも…俺は充分に役目を果たした…のではないだろうか。
本当なら、拳銃を抜く前に始末しておかなければならなかったのに。
そもそも、何でこの男は拳銃なんて持ち込めたのか。ここに入る前に、身体検査は受けるはず…。
いや、そんなことは…後でゆっくり調べれば良い。
とにかく女王が無事ならそれで…。
俺は女王の身の安全を確認する為に、彼女に振り向いた。
すると、そこには…何とも言えない、複雑そうな表情を浮かべた女王の姿があった。
安堵でも怯えでもない。苦しげな表情。
彼女は俺を見てはいなかった。俺に吹っ飛ばされた従兄弟をじっと見つめていた。
そこで、俺は思い出した。
…あの男、ローゼリア女王を…簒奪者と呼んだ。
それがどういう意味なのか、俺にはまだ分かっていなかった。
考える前に、俺の意識は暗闇の彼方に遠退いていった。
もしかしたら、死ぬのかもしれないな、と思った。
死にたくは…ないなぁ。まだ若いのに。
でも死ぬなら、もう一度だけ…会いたかった。
意識を失う最後の瞬間に、俺の脳裏に浮かんだのは…大好きな姉の姿ではなかった。
姉じゃなくて、俺のたった一人の…。
それは認める。
けれど、完全に気を緩ませていた訳ではなかった。
そんな生半可な訓練は受けてきていない。
その男が拳銃を取り出して、ローゼリア女王に向けようとしたときには既に、俺は左手の剣を抜いていた。
生憎ながら、俺の持ち味はその神速にあるのだ。
躊躇いなどなかった。相手がクリュセイス家の当主であろうと、女王の前で拳銃を持ち出した者に、容赦などする必要はない。
拳銃を向けようとしたその腕ごと、両断するつもりだった。
俺は女王を庇うように、彼女の前に出た。
しかし。
左手に持った剣が、男の腕に触れそうになった…瞬間。
「駄目!」
ローゼリア女王は、そう叫んだ。
その言葉に、俺は一瞬怯んでしまった。
何せ俺は、昔から…女王の命令に従い、彼女の意のままに生きるように、洗脳されてきたのだから。
その彼女の言葉に、俺は反応してしまったのだ。
一瞬動きが止まってしまった。
その一瞬が大きかった。
男はこちらに向けた黒い筒の引き金を、無我夢中で引き絞った。
乾いたような発砲音が響くと同時に、俺は動いていた。
腕を切り落とす代わりに、渾身の回し蹴りを食らわせてやった。
相手がローゼリア女王の従兄弟だろうが、もうそんなことは関係ない。
俺の渾身の蹴りを受けたゼフィランシアは、面白いほど見事に吹っ飛んだが。
生憎、相当分が悪い痛み分けに終わった。
回し蹴りをクリーンヒットさせた直後、俺は膝をついてしまった。
左の脇腹が、焼けるような痛みを発していた。
俺は女王を庇うように立っていた。ゼフィランシアが女王に向けて発砲すれば、そりゃ当然俺に当たる。
幸いなことに弾は抜けているが、出血はかなりのものだった。
蹴り飛ばされたゼフィランシアは、一発で気絶したらしく、ぴくりとも動かなかった。
何にせよ女王は守り抜いた。それだけでも…俺は充分に役目を果たした…のではないだろうか。
本当なら、拳銃を抜く前に始末しておかなければならなかったのに。
そもそも、何でこの男は拳銃なんて持ち込めたのか。ここに入る前に、身体検査は受けるはず…。
いや、そんなことは…後でゆっくり調べれば良い。
とにかく女王が無事ならそれで…。
俺は女王の身の安全を確認する為に、彼女に振り向いた。
すると、そこには…何とも言えない、複雑そうな表情を浮かべた女王の姿があった。
安堵でも怯えでもない。苦しげな表情。
彼女は俺を見てはいなかった。俺に吹っ飛ばされた従兄弟をじっと見つめていた。
そこで、俺は思い出した。
…あの男、ローゼリア女王を…簒奪者と呼んだ。
それがどういう意味なのか、俺にはまだ分かっていなかった。
考える前に、俺の意識は暗闇の彼方に遠退いていった。
もしかしたら、死ぬのかもしれないな、と思った。
死にたくは…ないなぁ。まだ若いのに。
でも死ぬなら、もう一度だけ…会いたかった。
意識を失う最後の瞬間に、俺の脳裏に浮かんだのは…大好きな姉の姿ではなかった。
姉じゃなくて、俺のたった一人の…。