浅黄色の恋物語
 冬が近付いてくるとカサブランカも葉が落ち茎が枯れ、球根だけになる。
空っぽに見えるプランターを隣に置いて酒を飲む。
 12月の声を聴くととたんに寒くなってくる。 寒がりのぼくは耐えられない。
それでもここは団地の3階。
上と下は高齢者だからストーブをしっかりと点けてくれてて暖かい。
大寒の頃になると室温7℃なんてことにもなるけど、、、。
 そんな部屋でさ、一人のんびりと生きてるわけです。
YouTubeで見たい動画を探し、ショッピングサイトで買いたい物を探す。
たまにはこうして小説を書き、音楽を聴く。
 収入は少ないよ。 仕事もそんなに無いから。
それでも不自由は感じない。 欲が無いからかな?
 そりゃね、毎晩飲みに行って女の子たちとキャーキャーやってりゃ楽しいかもしれないよ。
でも家に帰ったら何も無いじゃん。 虚しいだけ。
 食べ物と飲み物と家が在ればそれでいいじゃん。 他に何が要るの?
宝石とか金をたくさん買ってても死ねば荷物になるだけ。
天国には何も持っていけないんだよ。 裸一貫で帰らなきゃいけないの。
 だってぼくらはさ、裸一貫で生まれてきて裸一貫で死んでいくんだよ。
どんな豪邸に住んでいたってどんなに宝石を持っていたって天国じゃあ自慢すら出来ないの。
分かってないよね 今の人たちは。

 江戸時代、200両の金子が入った籠を店主のボンボンが道端に置き去りにして遊んでいても誰も盗まなかった。
商売のために送金するのも簡単。
 藩名が掛かれた籠に宛先を書いて金を入れる。 手数料は別の籠に入れる。
送金所は無人だから誰も居ない。 だからって誰も盗んだりはしなかった。
それだけ民意が高かったんだねえ。 今はどう?
 渋谷にそんなのが出来たら隙を見て誰か盗みに行くよね?
嘆かわしい時代だよ。 民意はめちゃくちゃ下がってるね。
だから通り魔が横行するんだよ。 情けない。

 今頃、久子姉さんたちは何をしてるんだろう? ふとそんなことを考える。
グループホームはまだまだ開放的だからいいけれど、特養なんて入ったら大変だ。
まずまず地域の人たちは来ないね。 閉鎖的な感じがして。
 家族でさえたまに見に来るだけっていう人が多いように思う。
 特養でも老健でもデーサービスはまだまだいいんだ。
入所区画に入っている人たちは悲惨だねえ。
 気に入らないと職員に虐められるし、閉め出されたりもする。
ぼくも何度かその現場を見たことが有る。 あれは周りには知れないなあ。
 かと思えば食事に薬を混ぜて食べさせてる職員たちも居る。
「今日は丼だからね。」なんて言いながらご飯に飲んでいる薬を全部ぶちまける。
相手は認知が入っているからか躊躇いもせず疑いもせずに食べる。
 人を人とは思わない。 そんな現実が有る。
そんな介護の現場でも恐ろしいくらいに人手不足が進んでいる。 対処法は無い。
 外国人を入れてみてもその場しのぎにしかならない。
横浜なんかじゃフィリピン人も多いらしいね。
 これまでの労働環境政策が間違っていたってことにならないのかな?
 確かに雇用は流動化したよ。
でもそれは雇う側の意志ではなく雇われる側の意思だった。
思いだけが先走り下から混乱してるんだよ。
{辞めたければ辞めればいい}があまりにも広まってしまった。
だから退職代行なんていう変な商売が持て囃されるわけ。
 企業倫理とか何とか言う前に労働者倫理を確立しなさいよ。
気分次第で辞められたら企業だって大迷惑でしょう?
それに出社しなくても給料だけは貰えるなんて変な制度も潰しなさい。
切りたいサボり魔も切れないようじゃ企業は発展しませんぞ。
 本当に国民がおかしくなっている。
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