浅黄色の恋物語

　ぼくらの仕事って単なる客商売に思われてるけど実は実はでその内容は医者よりも奥深いんですよ。
パソコンのデータにしか興味を持ってない医者とは大違いに大変な仕事なんですよ。　誰も知らないけど。
　医者は椅子に座ってデータを見ながら蘊蓄を垂れ流して薬を処方されますが、ぼくらはそんなわけにはいきません。

　患者さんに会いますとまずは声をしっかりと聴きます。　そこでおよその体調を把握するわけです。
もちろん機嫌がいいとか悪いとか怒りっぽいとか泣き虫とかそんなことまで気付きますよ。
　それから施術に入るわけですけど、ただただ触ればいいってもんでもない。
どの筋肉がどれくらい固くなっているのか、それによってどんな運動がどれくらい制限されているのか、、、？
そしてどうやれば運動制限を軽くすることが出来るのか？
　さらには痛い思いをさせないで施術をするためにはどうしたらいいのか？
施術前と後で状態がどう変わったか？　細かく細かく診ていきます。
　マッサージだけでもこれだけ考えることが有るんです。　そして気分を和らげるために話をします。
政治的　宗教的な話はしません。　相手が分かっていればしますけどね。
　鍼灸師はどうかというとそんなもんじゃないんですよ。
声を聴き、脈を診せてもらいます。　脈だけで病状　病症　性格　熱の有無、冷えや痛みの有無、渇きの有無を知ることが出来ます。
もちろん体力の有無も分かります。　それに合わせて使う鍼を選び手技を判断します。
　それだけの情報を一瞬で判別してから施術を行います。　失敗は許されません。
【刺せばいい。】　【揉めばいい。】では信用を勝ち取ることはまず出来ませんね。
　しっかりした技術を持っていないと信用されません。　恐ろしいくらいに患者さんはシビアです。
選ばれるのは話が上手い人か技術がしっかりしている人。
　椅子に座って支持しているお医者様とはここが違うんですよ。　ぼくらは実力主義です。
それをね、訪問マッサージの社長さんたちはむざむざと無駄にしている。　もったいないことですよ。
　そんな訪問マッサージに関わって13年。　よくやってきたもんだ。
今の治療院では不思議なことにクレームが一つも入らないんだって。　驚き中の驚きです。
みんな我慢してるのかなあ？　そう思ったりもしましたけど、それが現実だったんですね。
　そんな微妙過ぎる仕事だからこそ現代人　ハラスメント族には来てほしくないと思ってます。
些細なことで騒がれたのでは仕事になりません。　騒ぐくらいなら辞めてもらいます。
　何も咎めずに穏便に済ませようとしても患者さんはそうもいかないからね。　ぐずっていれば損をするのはこちらです。
社会不適応だとか何とか言って給料だけを貰っている人たちも居るけど、この業界には絶対に来ないでもらいたい。
　一部の不祥事が全体の不祥事に繋がるから。　それだけ精神的にも厳しい仕事なんですよ。
甘えチャンは要らない。　モヤシ人間も要らない。
　マッサージは儲かりそうだって思ってる人も多いけどそれは技術次第の話。
人気だけで食っていくには厳し過ぎるかなあ。　甘い夢は見ないほうがいいね。