低温を綴じて、なおさないで
改めて、直に視線を預けたら、ばちっと重なって、熱っぽく交錯した。今まで直のことずっと隣で、いちばん近くで見てきたはずなのに、こんなに色気の滲む表情を映したのははじめてだった。
幼なじみでもまだまだ知らないことはあるし、現にまだ、わたしの心をぎゅうぎゅう締め付ける苦くてあまい気持ちを伝えていないのだから。知らないことも、あって当然だ。
まだ伝えられないその気持ちの正体を唇に乗せて、温度を合わせるだけで、今のわたしには精一杯だ。
「……その代わり、今日は朝までぎゅってして」
言ってから恥ずかしくなって顔を伏せたら、もう一段階、引き寄せられた。触れ合う距離は、ゼロ距離。
力強く抱きしめられて、直の心臓の音がわたしと同じくらいはやいリズムを刻んでいた。わたしだけじゃなく、直もどきどきしているのがわかってうれしくなった。