低温を綴じて、なおさないで
終始揶揄うような声色と弾くような表情を向ける碧に、イエスとノーでは返せない。
誰も超えられない。常に栞がプラスを更新していくのに、誰がそれを追い越せるのだろうか。
昨日の栞を超えられても、今日の栞を、もっといえば明日の栞を超えられる人間なんて、俺の基準じゃ現れないだろう。代わりなんて見つかるはずがない。
もう彼女のことを好きじゃないと噂が回ってしまっているのなら、いつも通りの理由で俺が振られるのは時間の問題だろう。
あとで栞に甘いものを食べに行こうとメッセージを入れておこう。まだ別れてもいないのに、俺は本当に最低な奴だと思う。
「一途だね〜、直みたいなイケメンが一途って誰も勝てねーよ。まあでも、想い人も大人気だしなあ」