低温を綴じて、なおさないで
断定にかわいくクエスチョンマークをおまけさせる茉耶は、そのビジュアルの良さにかまけずあざとく要領よく、時にずる賢く生きてきた子だと思う。
1年後期からはじまったゼミがたまたま同じで仲良くなった茉耶。わたしが全休で、茉耶だけが大学に行っていた1年後期の木曜日。
教授に用があって、茉耶に在席かどうか連絡したとき「今日学校行ってなくてわかんないの」と返信があった。
後日そのことを聞いてみたら「全15回ぜんぶ代返してもらってる」とのことだった。
詳細は覚えていないけれど、そのとき、小悪魔さながらいたずらっぽく笑った茉耶がただ可愛くて、これは喜んで代返するかもって世の男の子たちを理解できた気がした。
そんな茉耶が、わたしの真面目な幼なじみすらいやがる講義をここまで休まず取っているのが不思議でならない。
その不思議はいとも簡単に南雲直という人物で答え合わせできてしまうのだけれど。