低温を綴じて、なおさないで
「『いつもの提出方法で』なんてわかんないこと言われたときは一から教えてくれたり、ちょっとだけ遅れちゃったときはレジュメ置いといてくれたり、いちいちやさしいんだ〜」
思い出しながら幸せそうにぽわぽわと表情筋をゆるめる茉耶に、あいもかわらず最低なわたしはほっと胸を撫で下ろす。
いまのところ茉耶の口から出てくる直との話はすべて大学内、もっといえば講義中のことだけだ。
大学を、講義を超えての関わりがないことに安堵するわたしの思考は小悪魔どころではなく悪魔だ。