冷酷非道な精霊公爵様は偽物の悪役令嬢を離さない
 服越しにフェイズの心臓の音が聞こえてくる。それはとても速く、今にも胸を突き破りそうなほどだ。その事実に、アベリアの心臓もまた大きく高鳴る。静かな夜の中で、二人の心臓音だけが聞こえてくるかのようだった。

「私も、あなたのことが好きです。あなたと夫婦になりたい、ずっと一緒にいたい」

 アベリアがフェイズを見つめ顔を赤くしてそう言うと、フェイズは心底嬉しそうに微笑んだ。しばらく見つめ合い、フェイズが静かにアベリアに顔を近づけるとアベリアはそっと瞳を閉じる。そして、二人の唇は優しく重なった。

(温かい……)

 フェイズの唇の温もりが伝わってくる。意外にも柔らかい感触に少し驚いていると、唇が少し離れてまた重なる。フェイズの唇がアベリアの唇を優しく食むようにすると、アベリアの口が少し開き、フェイズの舌がアベリアの口の中に侵入する。

 美しい星空の下、思いが通じ合った二人は飽きることなくいつまでも口づけを交わしていた。






 翌朝、二人の様子がいつもと違うことに気づいたシャルロッテは目を輝かせる。

「まあ!もしかして今日はお祝いですね!ね!そうでしょう?お兄さま!お姉さま!」
「おい、勝手にはしゃぐな!いいから少し落ち着け、静かにしろ……って、俺の話を少しは聞けよ!」

 わいわいと騒ぐ二人を見つめながら、アベリアは嬉しそうに楽しそうに笑った。



 作り上げられた偽物の悪役令嬢は、冷酷非道と名高い精霊公爵の元で末長く幸せに暮らすことになる。実は愛情深い精霊公爵は偽物の悪役令嬢を溺愛し、二人の間に可愛い子供が生まれるのは二人が結婚してすぐのことだ。精霊公爵の妹は二人の子供をそれはそれは可愛がり、二人によって人と関わることを少しずつ受け入れ、妹もまた素敵な令息と出会い、幸せに暮らすこととなる。



——精霊に気に入られた人間は、そのまま精霊の加護を受ける
——我らの加護は未来永劫、ずっと続いていく
——精霊公爵家もその家族も幸せにしかなれぬのだよ
——フフフ、ハハハハハ

 フェイズの屋敷の周囲で光の粒が楽しそうに漂っていた。
< 30 / 30 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:31

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
双子の聖女が表と裏で国を支える小国ポリウス。双子の姉セイラは、表舞台で活躍する妹ルシアのために裏聖女として聖女の力を奮ってきた。 だが、突然隣国レインダムに政治的材料として売られてしまう。粗暴で荒々しい国と噂されていたレインダムだったが、実際は穏やかで豊かな国だった。 ポリウスでは裏聖女として質素で地味な生活を余儀なくされていたが、レインダムでは聖女として優遇な扱いを受け戸惑うセイラ。セイラが聖女として求められることは黒騎士と言われる最強の騎士ダリオスの病を治すことだった。さらに、ダリオスとは契約結婚するように言われてしまう。 一方、セイラがいなくなったことでポリウスは日に日に国力が落ち、天変地異や瘴気による厄災が後をたたない。表舞台に立つ聖女ルシアは、セイラの力に胡坐をかいて聖女としての祈りを怠っていたために力が無くなっていた。 慌てるポリウスの国王とルシアはセイラを取り戻そうとするが……。 他サイトにも投稿しています。
表紙を見る 表紙を閉じる
第一王子をたぶらかしたと嘘の罪をきせられ追放され、領地の外れでひっそりと暮らしている伯爵令嬢のエリスは、森の中で瀕死になっている一匹の犬を見つける。回復するまで屋敷で世話を焼いていたある日、ふと目が覚めると目の前には見知らぬ美しい男性が寝ていた。 「俺は犬じゃない。狼の神獣だ」 狼の神獣イリオに見初められたエリスは、イリオと共に日々を過ごすことになる。そんなある日、エリスは追放された原因である第一王子に王城へ呼ばれて……。エリスを巡るイリオと第一王子の時を超えた愛憎劇が始まった。
表紙を見る 表紙を閉じる
継母と義姉に良く思われず実家に居場所のない伯爵令嬢シーラ・ランドベルは、領地内の外れにある小さな屋敷に追いやられひっそりと暮らしていた。シーラを嫌う義姉のキリルは、ことあるごとにシーラの元を訪ね、嫌がらせをする。 ある日、シーラが散歩をしていると、突然美しい青い小鳥が目の前に落ちる。瀕死の青い小鳥を拾い助けてあげると、小鳥は元気になり、シーラにすっかり懐いてしまった。 小鳥を拾ってから数週間後、シーラは突然婚約者に婚約破棄を手紙で言い渡される。絶望するシーラに追い打ちをかけるように、青い小鳥は突然シーラの元からいなくなってしまう。何もかも失ったシーラをさらにキリルは執拗にいじめるが、突然見知らぬ青髪の美しい男性がやってきて……。 「俺の番になってほしい。君を幸せにしたいんだ」 虐げられ令嬢のハッピーエンドなシンデレラストーリー。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop