冷酷非道な精霊公爵様は偽物の悪役令嬢を離さない
 服越しにフェイズの心臓の音が聞こえてくる。それはとても速く、今にも胸を突き破りそうなほどだ。その事実に、アベリアの心臓もまた大きく高鳴る。静かな夜の中で、二人の心臓音だけが聞こえてくるかのようだった。

「私も、あなたのことが好きです。あなたと夫婦になりたい、ずっと一緒にいたい」

 アベリアがフェイズを見つめ顔を赤くしてそう言うと、フェイズは心底嬉しそうに微笑んだ。しばらく見つめ合い、フェイズが静かにアベリアに顔を近づけるとアベリアはそっと瞳を閉じる。そして、二人の唇は優しく重なった。

(温かい……)

 フェイズの唇の温もりが伝わってくる。意外にも柔らかい感触に少し驚いていると、唇が少し離れてまた重なる。フェイズの唇がアベリアの唇を優しく食むようにすると、アベリアの口が少し開き、フェイズの舌がアベリアの口の中に侵入する。

 美しい星空の下、思いが通じ合った二人は飽きることなくいつまでも口づけを交わしていた。






 翌朝、二人の様子がいつもと違うことに気づいたシャルロッテは目を輝かせる。

「まあ!もしかして今日はお祝いですね!ね!そうでしょう?お兄さま!お姉さま!」
「おい、勝手にはしゃぐな!いいから少し落ち着け、静かにしろ……って、俺の話を少しは聞けよ!」

 わいわいと騒ぐ二人を見つめながら、アベリアは嬉しそうに楽しそうに笑った。



 作り上げられた偽物の悪役令嬢は、冷酷非道と名高い精霊公爵の元で末長く幸せに暮らすことになる。実は愛情深い精霊公爵は偽物の悪役令嬢を溺愛し、二人の間に可愛い子供が生まれるのは二人が結婚してすぐのことだ。精霊公爵の妹は二人の子供をそれはそれは可愛がり、二人によって人と関わることを少しずつ受け入れ、妹もまた素敵な令息と出会い、幸せに暮らすこととなる。



——精霊に気に入られた人間は、そのまま精霊の加護を受ける
——我らの加護は未来永劫、ずっと続いていく
——精霊公爵家もその家族も幸せにしかなれぬのだよ
——フフフ、ハハハハハ

 フェイズの屋敷の周囲で光の粒が楽しそうに漂っていた。
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