孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「あ、可愛い……」
白猫と黒猫の少し立体的な絵柄のペアマグカップは、ふたつ並べるとじゃれ合うように寄り添うデザインになる。
「これも買ってく?」
「可愛いですよね?」
「ああ。でも」
遥さんが背を屈めて私の耳元に唇を寄せる。
「熱愛中のカップルみたいだな」
そんな言葉を呟かれて、目を見開いてしまう。
「そんなつもりで言ったわけではないです! やっぱりやめましょう!」
そんなやり取りをしていた時だった。
「あれ? 高坂?」
すぐ近くから声をかけられ、遥さんと共に振り返る。
そこにいたのは、『JSAL』の桐生七央機長。
空港ではないプライベートな場で会うのは初めてのことだ。
「やっぱり高坂だ」
「桐生、こんなところで奇遇だな」
桐生機長は遥さんと同年代の機長で、遥さん同様女子たちの話題に頻繁に上がる人。
でも、桐生機長はすでに既婚者。
数年前に結婚した時は、みんなが祝福と共に密かに悲しみに包まれていた。
桐生機長のとなりにいる女性が、噂の奥様なのだろう。
ゆるふわの肩上ボブと色白な肌、ぱっちりとした目が印象的な可愛らしい女性。
情報通の仲間たちが知らせてきた話によると、奥様は助産師さんだという。
すごく感じのいい方で、ふたりが話し始めると私たちに向かってにこりと笑って会釈をしてくれた。