Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

迎撃

 シリウスは、北辰の祠に続く道に立った。誰もがこの道を通らねば祠には行けない。今回はここで迎撃することにした。
「ミラ、スピカ。天漢癒の腕輪を貸せ」
 ついてきた2人を守るため、腕輪で膜を張ろうとする。しかし、ミラとスピカは
「シリウス、見てて」
 2人が腕輪をはめた腕を掲げると、光の膜ができた。
「お前らいつの間に!?」
「えへへ、びっくりしたでしょ?」
「いつまでもあなたに頼りっきりじゃいけないからね」
 光の膜をつくるのは相応の修練がいるはずなのに…。彼女らは、シリウスには内緒でアルクトゥルスの訓練を受けていたのだ。
「シリウス、来たわ!」
「けがしたら言ってね、治癒するから」
「ああ、ありがとう」
 そう言うと、シリウスは七星剣を構えた。夕闇だが、視認しただけで10人強はいる。早速、数人がこちらに向かって走ってきた。
「一の秘剣・魚釣り星!」
 七星剣が鞭状に変形し、しなりながら一気に蹴散らした。初めてこの技を発動した時よりも威力と攻撃範囲が上がっている。
「シリウス、すごい…」
「ええ…」
 彼は大海嘯の後も修行を積んできたのだ。悪友たちの悲劇を繰り返さないために――。その成果が、技の威力に集約されていた。
 シリウスの戦い方はかなり熟達している。襲ってくる者は魚釣り星か螺旋昴で迎撃し、投擲は文綾の星で防ぎ、シリウスの防御を突破した者は釣り鐘星で倒した。いずれの技も威力と発動範囲が上がっている。しかしながら、1人として絶命していない。
「お前ら、いい加減あきらめろ。俺がいる限りポラリスは奪えん」
 倒れて動けない敵に向かって言い放った。ほとんど地にひれ伏し、立っているのは2人だけだ。
「…やるなあ、お前」
 残っていたうちの1人が言った。目を凝らすと長めの髪の男だった。
「アルタイル、首領のあなたがいかなくても…」
 もう一人が口をきく。声色とシルエットからは女性と見受けられた。
「ベガ、ここは俺にやらせろよ」
 シリウスと盗賊団の首領――アルタイルは30メートルほどの距離で対峙する。
(こいつ…他の盗賊と違う)
 余裕の冷笑を浮かべて、アルタイルはゆっくりと剣を抜く。驚くことに、太さが30センチはある。刀身が黒く、刃の部分は真紅で染まっている。拵えは鍔と柄尻にきらびやかな宝石が埋め込まれていた。
(なんてごつい剣だ…)
「ア、アルタイル様…」
 倒れていた男が助けを求めるように手を差し出す。アルタイルは笑顔でそれを見ながら
「役立たず、まだ生きていたのか」
 と言い放つと、男の体を剣で縦に切り裂いた。
「!!」
「きゃあああ!!」
 スピカとミラが悲鳴を上げる。目の前で人が殺された。しかもかなり猟奇的なやり方だ。
「あーあ、役立たずのくせに、一丁前に派手な血しぶき出しちゃって」
 飽きたおもちゃを壊すような調子のアルタイル。こいつ、危険だ…!
「いくぞ」
 アルタイルは猛スピードでシリウスとの間合いを詰め、剣で斬りかかる。シリウスは七星剣で防ぐが、剣戟の重さに驚愕した。
「がっ!!」
 威力に耐えきれず吹っ飛び、岩に激突した。
「シリウス!!」
 倒れたシリウスは起き上がろうとする。しかし立てない。
 ――しまった、右足が折れた!
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