Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
3人で過ごす黄昏
ミラとスピカから不意打ちを食らって1週間。しばらく盗賊は来なかった。紫微垣が守っていると分かり、あきらめたのか……。でも、そんな気がしない。それにしても、ミラとスピカはその次の日は普通にしていた。女心は難しいなあ……。
そのように庵でつらつら考えていると、窓の外は夕方になっていた。
「今日は来るか……」
敵はこちらを油断させる目的があるかもしれない。確実に撃退するまでは気が抜けないな。そう思っていると、スピカがやってきた。
「シリウス、いる?」
庵に入ってきたスピカは、透き通るような声で尋ねた。
「あ、ああ…どうした?」
「最近寝不足なんじゃない?」
言われてハッとした。確かに、盗賊どもを警戒して夜はあまり眠れていない。気がたっているのもあって、自覚していなかった。
「しばらく眠れないものね。少し待っていて」
スピカは天漢癒の銀の腕輪をはめると、手をシリウスの額に当てた。額から、じんわりとスピカのぬくもりが伝わってくる。
スピカははにかみながらシリウスに顔を近づけた。
「シリウス、辛い時は言ってね。いつでも癒やしてあげるから……」
潤んだ瞳にほんのりと赤い頬と唇。いつ見てもスピカはきれいだ。いや、以前より艶っぽくなったかもしれない。
「あ、ありがとう…」
見とれていると、聞き覚えのある元気な声がやってきた。
「シリウス、いるー?」
慌ててスピカと離れる。庵に入ってきたミラは、シリウスに手土産を渡した。
「はい、お母さんから。いつもお世話になっているからって」
りんごやみかんといった果物だった。どれもみずみずしくておいしそうだ。
「みんなで食べよ。シリウス、切ってー」
「土産を自分で食べるヤツは珍しいな…」
呆れながらもりんごの皮をむくシリウス。手際が良く、しかも皮が途中で切れない。きれいに切れたりんごを3人で頬張る。
「まだ食べたいなあ」
ミラが呟く。
「お前な…」
シリウスは立ち上がるとお湯を沸かし始める。
「スピカ、りんごをもう一つ切ってくれないか?」
「え!?」
シリウスは何気なく頼んだが、スピカの顔が引きつる。
「どうした?」
「う、うん、やるわ」
そう言って果物ナイフでりんごをむき始める。その途端に
「痛っ!」
とスピカが叫んだ。見ると指が切れて血が流れている。
「大変! 先輩、大丈夫!?」
「う、うん…」
「ミラ、手当してやってくれ」
ミラは天漢癒の腕輪をはめてスピカの指に手を添える。瞬く間に傷が癒えていく。
一方のシリウスは、スピカが切ったりんごを見て驚いた。わずか2センチの長さしかむいていないところで止まっている。おまけに皮にくっついている身が分厚い。
「スピカ、もしかして…」
料理…苦手なのか?
「あ、あのね、フライパンで野菜を炒めたり、お鍋で煮たりするのはできるの。材料を混ぜたりとかも。でも、ナイフとか包丁が苦手なの…」
顔を赤らめて言う。意外な弱点だった。幼い頃、家族と料理することがあっても、包丁の類いは「危ないから」と握らせてもらえなかったらしい。末っ子ということもあり、具材を切ることは両親や兄たちがやってきたようだ。
「……」
気まずい沈黙が流れる。スピカは涙目だった。ろくに包丁が使えない女なんて…シリウス、幻滅しちゃった?
「まあ何だ…何でもこなせるより、一つくらい苦手なものがあった方がかわいいし…」
顔を赤くしながら視線を泳がせるシリウス。
「シリウス、フォローになってないよ」
「ミラ、黙っていろ!」
うつむくスピカ。ああ、こういう時はどうしたらいいのか……。
すると突然、シリウスの表情が急に変わった。
――足音が近づいている。1人、2人…10人はいる。
とっさに「賊」と判断し、七星剣をとって庵の外に出た。
そのように庵でつらつら考えていると、窓の外は夕方になっていた。
「今日は来るか……」
敵はこちらを油断させる目的があるかもしれない。確実に撃退するまでは気が抜けないな。そう思っていると、スピカがやってきた。
「シリウス、いる?」
庵に入ってきたスピカは、透き通るような声で尋ねた。
「あ、ああ…どうした?」
「最近寝不足なんじゃない?」
言われてハッとした。確かに、盗賊どもを警戒して夜はあまり眠れていない。気がたっているのもあって、自覚していなかった。
「しばらく眠れないものね。少し待っていて」
スピカは天漢癒の銀の腕輪をはめると、手をシリウスの額に当てた。額から、じんわりとスピカのぬくもりが伝わってくる。
スピカははにかみながらシリウスに顔を近づけた。
「シリウス、辛い時は言ってね。いつでも癒やしてあげるから……」
潤んだ瞳にほんのりと赤い頬と唇。いつ見てもスピカはきれいだ。いや、以前より艶っぽくなったかもしれない。
「あ、ありがとう…」
見とれていると、聞き覚えのある元気な声がやってきた。
「シリウス、いるー?」
慌ててスピカと離れる。庵に入ってきたミラは、シリウスに手土産を渡した。
「はい、お母さんから。いつもお世話になっているからって」
りんごやみかんといった果物だった。どれもみずみずしくておいしそうだ。
「みんなで食べよ。シリウス、切ってー」
「土産を自分で食べるヤツは珍しいな…」
呆れながらもりんごの皮をむくシリウス。手際が良く、しかも皮が途中で切れない。きれいに切れたりんごを3人で頬張る。
「まだ食べたいなあ」
ミラが呟く。
「お前な…」
シリウスは立ち上がるとお湯を沸かし始める。
「スピカ、りんごをもう一つ切ってくれないか?」
「え!?」
シリウスは何気なく頼んだが、スピカの顔が引きつる。
「どうした?」
「う、うん、やるわ」
そう言って果物ナイフでりんごをむき始める。その途端に
「痛っ!」
とスピカが叫んだ。見ると指が切れて血が流れている。
「大変! 先輩、大丈夫!?」
「う、うん…」
「ミラ、手当してやってくれ」
ミラは天漢癒の腕輪をはめてスピカの指に手を添える。瞬く間に傷が癒えていく。
一方のシリウスは、スピカが切ったりんごを見て驚いた。わずか2センチの長さしかむいていないところで止まっている。おまけに皮にくっついている身が分厚い。
「スピカ、もしかして…」
料理…苦手なのか?
「あ、あのね、フライパンで野菜を炒めたり、お鍋で煮たりするのはできるの。材料を混ぜたりとかも。でも、ナイフとか包丁が苦手なの…」
顔を赤らめて言う。意外な弱点だった。幼い頃、家族と料理することがあっても、包丁の類いは「危ないから」と握らせてもらえなかったらしい。末っ子ということもあり、具材を切ることは両親や兄たちがやってきたようだ。
「……」
気まずい沈黙が流れる。スピカは涙目だった。ろくに包丁が使えない女なんて…シリウス、幻滅しちゃった?
「まあ何だ…何でもこなせるより、一つくらい苦手なものがあった方がかわいいし…」
顔を赤くしながら視線を泳がせるシリウス。
「シリウス、フォローになってないよ」
「ミラ、黙っていろ!」
うつむくスピカ。ああ、こういう時はどうしたらいいのか……。
すると突然、シリウスの表情が急に変わった。
――足音が近づいている。1人、2人…10人はいる。
とっさに「賊」と判断し、七星剣をとって庵の外に出た。