Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
カノープスの昔語り①――紫微垣の歴史
紫微垣はアルクトゥルスにいたるまで4人いた。しかし、その継承は苦難に満ちたものだったという。
初代紫微垣・アルコルは神から啓示を受けてポラリスを奉納した。しかし、次世代に継承することができずに逝去し、300年のブランクができてしまう。その間にポラリスが盗まれたのか、自然災害である疫病が蔓延して星の大地の人々は苦しみ始める。
これを受け、二代目紫微垣・フォマルハウトが北の町――当時は北の島や北の村と言っていたそうだが、紫微垣のことを調べて盗まれていたポラリスを再び奉納した。その時流行った疫病は、彼の活躍のおかげで治まったのだ。
その後、フォマルハウトは紫微垣を次世代にしっかり継承しようと、育成機関を作って数人の候補者を育て始める。しかし、今度はその候補者同士で跡目争いが起きた。それが高じて血なまぐさい争いになり、絶望して去って行った者もいた。その中で三代目紫微垣になったのがカノープスだった。
そしてカノープスは、候補者数人を育成する方法を廃止し、一子相伝の要領で、紫微垣自らが継承する人物を探し、鍛えるようにした。しかし、これも失敗が続いてなかなか継承者が現れなかった。そこでカノープスは南極寿星の秘術を使い、長生きして候補者を探し続けた。もっとも、アルクトゥルスが戦死し、自らが候補者の後見になるとは思わなかったという。
「大変なご苦労があったんですね…」
スピカが呆然とつぶやく。するとカノープスがさみしそうな表情をした。
「アルクトゥルスのことは聞いた。残念じゃった。弟子が師より先に逝くなど、子が親より先に死ぬようなものじゃ……」
シリウスは胸が痛んだ。
「俺がもっとしっかりしていれば…」
するとカノープスはシリウスを見た。
「わしがおぬしを鍛えることはできん。もうこの年じゃからのう。しかし、七星剣と八の秘剣の習得については教えられる」
シリウスが身を乗り出す。
「教えてくれ! これ以上人を死なせたくない!」
「そのような青臭い言葉、嫌いではないぞ」
そういうと、カノープスは語り始めた。
七星剣と八の秘剣の習得は、正式な紫微垣になるための最後の修行である。そのためには、先代の紫微垣の導きで北の町にある七つの祠を回らなければならない。すなわち、岩屋にある貪狼、港にある巨門、墓地にある禄存、名士の家の裏にある文曲、この茶屋にある兼貞、北辰の祠に続く道の入り口にある武曲、そして町の最西端にある破軍である。
東から順番に回り、それぞれの祠で星鏡を一つ入手し、かつ七星剣の他の材料や知識、秘剣に関する知識を得ていく。破軍までクリアできれば二つの修行は終わり、晴れて紫微垣となるわけだ。
「ところで、八の秘剣・北落師門ってどんな技なんですか?」
スピカが聞いた。すると、おおよそこのような技だ。
七星剣にはまっている七つの星鏡を、南の魚座の星図に似せて標的の周りにちりばめる。その後、技を発動させると、敵の攻撃と殺意をそのまま敵に反射することができるのだ。
「しかし、それでは技発動の後にスキができる……」
「その通り」
七星剣は、星金と星鏡が連動して一から七の秘剣を繰り出す。それがばらばらになるということは、その間は他の秘剣を使えないということだ。
しかも、クリスタルが剣に戻るには北落師門が発動してから20秒はかかるという。
「その20秒間、完全に無防備になる。いわば諸刃の剣か……」
「そうじゃ。ちなみにこの技に開眼したのは二代目のフォマルハウトじゃった。歴代の紫微垣もその危険性から、生涯でほとんど使わなかった。わしも一回しか使わなかったし、アルクトゥルスは先の戦いで初めて使ったものの、完全には発動できなかったようじゃ」
習得し、完全に発動できるだろうか――シリウスは手が震えるのを感じた。
初代紫微垣・アルコルは神から啓示を受けてポラリスを奉納した。しかし、次世代に継承することができずに逝去し、300年のブランクができてしまう。その間にポラリスが盗まれたのか、自然災害である疫病が蔓延して星の大地の人々は苦しみ始める。
これを受け、二代目紫微垣・フォマルハウトが北の町――当時は北の島や北の村と言っていたそうだが、紫微垣のことを調べて盗まれていたポラリスを再び奉納した。その時流行った疫病は、彼の活躍のおかげで治まったのだ。
その後、フォマルハウトは紫微垣を次世代にしっかり継承しようと、育成機関を作って数人の候補者を育て始める。しかし、今度はその候補者同士で跡目争いが起きた。それが高じて血なまぐさい争いになり、絶望して去って行った者もいた。その中で三代目紫微垣になったのがカノープスだった。
そしてカノープスは、候補者数人を育成する方法を廃止し、一子相伝の要領で、紫微垣自らが継承する人物を探し、鍛えるようにした。しかし、これも失敗が続いてなかなか継承者が現れなかった。そこでカノープスは南極寿星の秘術を使い、長生きして候補者を探し続けた。もっとも、アルクトゥルスが戦死し、自らが候補者の後見になるとは思わなかったという。
「大変なご苦労があったんですね…」
スピカが呆然とつぶやく。するとカノープスがさみしそうな表情をした。
「アルクトゥルスのことは聞いた。残念じゃった。弟子が師より先に逝くなど、子が親より先に死ぬようなものじゃ……」
シリウスは胸が痛んだ。
「俺がもっとしっかりしていれば…」
するとカノープスはシリウスを見た。
「わしがおぬしを鍛えることはできん。もうこの年じゃからのう。しかし、七星剣と八の秘剣の習得については教えられる」
シリウスが身を乗り出す。
「教えてくれ! これ以上人を死なせたくない!」
「そのような青臭い言葉、嫌いではないぞ」
そういうと、カノープスは語り始めた。
七星剣と八の秘剣の習得は、正式な紫微垣になるための最後の修行である。そのためには、先代の紫微垣の導きで北の町にある七つの祠を回らなければならない。すなわち、岩屋にある貪狼、港にある巨門、墓地にある禄存、名士の家の裏にある文曲、この茶屋にある兼貞、北辰の祠に続く道の入り口にある武曲、そして町の最西端にある破軍である。
東から順番に回り、それぞれの祠で星鏡を一つ入手し、かつ七星剣の他の材料や知識、秘剣に関する知識を得ていく。破軍までクリアできれば二つの修行は終わり、晴れて紫微垣となるわけだ。
「ところで、八の秘剣・北落師門ってどんな技なんですか?」
スピカが聞いた。すると、おおよそこのような技だ。
七星剣にはまっている七つの星鏡を、南の魚座の星図に似せて標的の周りにちりばめる。その後、技を発動させると、敵の攻撃と殺意をそのまま敵に反射することができるのだ。
「しかし、それでは技発動の後にスキができる……」
「その通り」
七星剣は、星金と星鏡が連動して一から七の秘剣を繰り出す。それがばらばらになるということは、その間は他の秘剣を使えないということだ。
しかも、クリスタルが剣に戻るには北落師門が発動してから20秒はかかるという。
「その20秒間、完全に無防備になる。いわば諸刃の剣か……」
「そうじゃ。ちなみにこの技に開眼したのは二代目のフォマルハウトじゃった。歴代の紫微垣もその危険性から、生涯でほとんど使わなかった。わしも一回しか使わなかったし、アルクトゥルスは先の戦いで初めて使ったものの、完全には発動できなかったようじゃ」
習得し、完全に発動できるだろうか――シリウスは手が震えるのを感じた。