Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
紫微垣の試練①――貪狼(とんろう)の祠
翌日。3人は再びカノープスを訪ねた。
「よいか、それではこれから紫微垣になるための最後の試練を課す」
そう言うと、カノープスは持っていた鏡の玉を空に放った。すると、玉が光り、その光があちらこちらに飛び散った。
「回る祠は貪狼からじゃ。そこから西へと進む。いずれも鏡の玉が一つと、七星剣か八の秘剣に関する物や情報が手に入る」
最後の破軍の祠まで行って七星剣を入手して秘剣をマスターすれば、正式な紫微垣になる。
「これを持って行け」
カノープスがくれたのは、七星剣と3つの包みだった。
「この七星剣は?」
「わしのものじゃ。もうあまり使わんからのう、お前に貸してやる」
「あれ? これ、星鏡の色が違うね」
ミラが指摘した。そう、アルクトゥルスから借りた七星剣の星鏡は水色だった。これは紫である。
「この星鏡は作り手によって色を変えるんじゃ。作り手の意志や個性がそうさせるのじゃろう」
しばらく使ってはいなかったが、その前までは愛用していたらしい。耐性としてはそろそろ限界を迎えるが、修行を終えるまでは持つだろうということで使わせてもらうことにした。
3つの包みは弁当であった。
「わしが作った。途中で食え」
「え、カノープスさんが?」
スピカは驚いた。星の大地では料理や食事は女性がすることが多い。特に、二~三世代前にさかのぼると、「男子厨房に入らず」の風潮があったはずで、この年代……と言っても、カノープスは例外的に生きているのだが、とにかく料理をする男性が珍しい。
「わしはもともと、紫微垣の候補者の食事を作る係じゃった。料理は得意なんじゃ」
「へえ、おじいちゃん、すごいんだね」
目をキラキラさせるミラと、「えっへん」と胸をはるカノープス。その構図がおもしろかった。
「ありがとう。じゃ、行ってくる」
シリウスがそう言うと、3人は貪狼の祠に向かった。
貪狼の祠がある岩屋。ポラリスを盗もうとして捕まった後、アルクトゥルスに連れてこられた。紫微垣としての修行は、ここから始まったんだ。
大きな岩に囲まれており、その一画にアルクトゥルスの庵がある。最後の修行を知ったのも、この庵にある資料を探ったからだった。
「ねえ、あれ何かしら?」
スピカが指さす方を見ると、青く光る獣がいた。
「お、狼!?」
早速、おいでなすったな――シリウスは二人を下がらせた。
「来い!」
狼は一気に間合いを詰めてシリウスに飛びかかってきた。その牙は大きく鋭い。狼の攻撃を回避し、七星剣でその腹を叩く。しかし敵も手強い。体をよじって直撃を避けられたようだ。
(やるな……)
再び狼と間合いをとり、対峙する。この後、六つの祠を回らなければならない。あまり時間はかけられないと判断し、一気に勝負に出ることにした。
――先手必勝!
「一の秘剣・魚釣り星!」
シリウスは七星剣を鞭に変型させ、狼に放った。剣は紫色に光り、砂利を散らしながら狼に襲いかかる。しかし、狼はそれをかわしながら、シリウスに近づいてくる。
「シリウス!」
ミラが叫ぶのを聞きながら、シリウスは接近してきた狼に照準を合わせ、剣の向きを変える。
「六の秘剣・釣り鐘星!」
鞭の先が突然くの字に折れ曲がって、狼の背中に直撃した。狼は地面にどうっ、と倒れる。秘剣の連続攻撃が功を奏した。
「よし!」
すると、狼の体が小さくなって一つの鏡の玉となった。
「七星剣の星鏡……」
これを各祠で七つ集める。あとは、他に必要なものがあるらしいが……。
「ん?」
狼が倒れていた地面の色が変わっている。地中に何か埋まっているように見える。シリウスは手で掘ってみると、両手で持てる大きさの金属の塊が出てきた。ただの金属ではないことは、小さな星のようにキラキラと光ることからも分かる。まるで、星空を凝縮したようなものだ。
「これ…星金かしら?」
スピカが持っていた紫微垣の本で調べると、星金の性質と一致している。
「じゃあ、これが七星剣になるのね」
ミラがのぞき込む。この要領で、星鏡と何かしらの物を手に入れればいいというわけか。
「よし、次行くぞ。巨門(こもん)の祠だ」
「よいか、それではこれから紫微垣になるための最後の試練を課す」
そう言うと、カノープスは持っていた鏡の玉を空に放った。すると、玉が光り、その光があちらこちらに飛び散った。
「回る祠は貪狼からじゃ。そこから西へと進む。いずれも鏡の玉が一つと、七星剣か八の秘剣に関する物や情報が手に入る」
最後の破軍の祠まで行って七星剣を入手して秘剣をマスターすれば、正式な紫微垣になる。
「これを持って行け」
カノープスがくれたのは、七星剣と3つの包みだった。
「この七星剣は?」
「わしのものじゃ。もうあまり使わんからのう、お前に貸してやる」
「あれ? これ、星鏡の色が違うね」
ミラが指摘した。そう、アルクトゥルスから借りた七星剣の星鏡は水色だった。これは紫である。
「この星鏡は作り手によって色を変えるんじゃ。作り手の意志や個性がそうさせるのじゃろう」
しばらく使ってはいなかったが、その前までは愛用していたらしい。耐性としてはそろそろ限界を迎えるが、修行を終えるまでは持つだろうということで使わせてもらうことにした。
3つの包みは弁当であった。
「わしが作った。途中で食え」
「え、カノープスさんが?」
スピカは驚いた。星の大地では料理や食事は女性がすることが多い。特に、二~三世代前にさかのぼると、「男子厨房に入らず」の風潮があったはずで、この年代……と言っても、カノープスは例外的に生きているのだが、とにかく料理をする男性が珍しい。
「わしはもともと、紫微垣の候補者の食事を作る係じゃった。料理は得意なんじゃ」
「へえ、おじいちゃん、すごいんだね」
目をキラキラさせるミラと、「えっへん」と胸をはるカノープス。その構図がおもしろかった。
「ありがとう。じゃ、行ってくる」
シリウスがそう言うと、3人は貪狼の祠に向かった。
貪狼の祠がある岩屋。ポラリスを盗もうとして捕まった後、アルクトゥルスに連れてこられた。紫微垣としての修行は、ここから始まったんだ。
大きな岩に囲まれており、その一画にアルクトゥルスの庵がある。最後の修行を知ったのも、この庵にある資料を探ったからだった。
「ねえ、あれ何かしら?」
スピカが指さす方を見ると、青く光る獣がいた。
「お、狼!?」
早速、おいでなすったな――シリウスは二人を下がらせた。
「来い!」
狼は一気に間合いを詰めてシリウスに飛びかかってきた。その牙は大きく鋭い。狼の攻撃を回避し、七星剣でその腹を叩く。しかし敵も手強い。体をよじって直撃を避けられたようだ。
(やるな……)
再び狼と間合いをとり、対峙する。この後、六つの祠を回らなければならない。あまり時間はかけられないと判断し、一気に勝負に出ることにした。
――先手必勝!
「一の秘剣・魚釣り星!」
シリウスは七星剣を鞭に変型させ、狼に放った。剣は紫色に光り、砂利を散らしながら狼に襲いかかる。しかし、狼はそれをかわしながら、シリウスに近づいてくる。
「シリウス!」
ミラが叫ぶのを聞きながら、シリウスは接近してきた狼に照準を合わせ、剣の向きを変える。
「六の秘剣・釣り鐘星!」
鞭の先が突然くの字に折れ曲がって、狼の背中に直撃した。狼は地面にどうっ、と倒れる。秘剣の連続攻撃が功を奏した。
「よし!」
すると、狼の体が小さくなって一つの鏡の玉となった。
「七星剣の星鏡……」
これを各祠で七つ集める。あとは、他に必要なものがあるらしいが……。
「ん?」
狼が倒れていた地面の色が変わっている。地中に何か埋まっているように見える。シリウスは手で掘ってみると、両手で持てる大きさの金属の塊が出てきた。ただの金属ではないことは、小さな星のようにキラキラと光ることからも分かる。まるで、星空を凝縮したようなものだ。
「これ…星金かしら?」
スピカが持っていた紫微垣の本で調べると、星金の性質と一致している。
「じゃあ、これが七星剣になるのね」
ミラがのぞき込む。この要領で、星鏡と何かしらの物を手に入れればいいというわけか。
「よし、次行くぞ。巨門(こもん)の祠だ」