Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
果実の木々
「さて、ここからは比較的楽な道になるだろう」
ミザルが目の前の草原を指さす。砂丘で鬼さそりを退けた後、この草原の入り口に入った。道の幅は200mほどあり、右側は山々が、左側は谷になっている。両脇に林もあるが、これまでの道に比べれば進みやすいことは想像できた。
「メラク、大丈夫?」
アルコルが心配する。昨日からずいぶん怖い目に遭っているはずだ。もしかしたら、もう嫌になっているかもしれない。
「うん、ありがとうアルコル。私は大丈夫だから……」
身なりは相変わらずアルコルからもらったスカーフを胸に巻き、短パンをはいている。下着は上下ともない。本来なら低地の村に連れて行って保護してもらいたかったが、啓示の数が多くなっている。早く進まなければ、取り返しの付かないことになるだろう。
「ついてくるのはかまわんが、アルコルは重要な使命を帯びている。これ以上、足は引っ張るなよ」
「分かっているわよ」
どこまでも容赦ないミザルに対し、メラクがキッとにらむように反論する。
先の戦いでよく分かった。アルコルは想像もできないような何かを背負っている。だから、それを見届けようと思った。それは興味本位などではなかった。メラクの心に、これまでにはない感情が芽生えてしまったのだ。
(…今さらこんな気持ちになってしまうなんて…困ったものだけど、仕方ないよね)
今までいじめていた男の子。その人に守ってもらって、優しい言葉までかけてもらったら……。
(夕べ寝た時は、襲われていないことに安心したけど、もう襲われてもいいわ。もしそれでアルコルが許してくれるなら……)
そのくらいの気持ちになっている。この旅が何日かかるか分からないけど、最後まで見届ける。その後は――また身勝手と言われそうだけど、自分の気持ちを告白しよう。もちろん、これまでの罪を謝ってから……。
3人は無言で道を進んでいく。時刻は昼を過ぎた頃だろう。歩きながら、食料をかじることにした。行儀は悪いが時間が惜しいのだ。
「うーん、少し足りないなあ」
ミザルが腹を撫でる。もともと2人分の食料を持ってきていたのだが、メラクが加わったために減るのが早い。やむなく、少し節約して食べるようにしている。
「どうもごめんなさいね」
メラクはムッとした。確かに足を引っ張っているのは事実だが、ここまで言われるとさすがに腹が立つ。
「2人とも、けんかしないでよ」
アルコルが困惑ぎみに諭す。3人の中では一番年下なのに、妙なものだ。
(アルコル、少し大人っぽくなったのね…)
メラクはアルコルをちらっと見た。女の子のような顔立ちはそのままだが、どこか精悍な雰囲気が漂う。メラクは胸に手を当てた。
(どうしよう、気持ちがどんどんふくらんでいく…)
まさか、アルコルにこんな気持ちを持つなんて……いじめていた日々を後悔した。すると、果物がなっている林に着いた。
「ミザル、メラク、見て! 桃や梨がなっているよ! もらおうか!」
アルコルは木に登り、果実を数個もぐ。熟していておいしそうだった。2人に渡すと、アルコルは座り込んで食べ始める。
「おいしい!」
無邪気な笑顔がかわいい――こいつ、今までこんな表情見せてくれたことなかったな。果物が好きなのね。
メラクがそんなことを思いながら桃の皮をむいてかじりつくと、ミザルが聞き捨てならない言葉を発した。
「おいしいな。アルコルの得意なドライフルーツにしてもいいかもな。そうだ、ベナちゃんと一緒に来たらいいよ」
ベナちゃん――!? 誰よ、それ……。
「えー、でもここまで来るのには危険だよ。狼やら吊り橋やらさそりやらあるし…。この前だってベナは怖い目に遭っているからなあ」
「君が守ればいいじゃないか。この旅が終わったら二人で来なよ。君たちはドライフルーツ作りが趣味なんだから、いい機会じゃないか」
え、誰? 誰なの? 共通の趣味がある人? そんなの聞いていない……。
「ね、ねえ……」
メラクがおずおずと尋ねる。
「ベ、ベナちゃんって誰?」
顔を真っ赤にして泣きそうな顔のメラク。きょとんとするアルコルをよそに、ミザルがしれっと教えた。
「アルコルの彼女だよ。この前のキャンプで知り合ったんだ。相思相愛でかわいいカップルになったのさ」
メラクの目の前が真っ暗になった。そんな――いつの間に…?
ミザルが目の前の草原を指さす。砂丘で鬼さそりを退けた後、この草原の入り口に入った。道の幅は200mほどあり、右側は山々が、左側は谷になっている。両脇に林もあるが、これまでの道に比べれば進みやすいことは想像できた。
「メラク、大丈夫?」
アルコルが心配する。昨日からずいぶん怖い目に遭っているはずだ。もしかしたら、もう嫌になっているかもしれない。
「うん、ありがとうアルコル。私は大丈夫だから……」
身なりは相変わらずアルコルからもらったスカーフを胸に巻き、短パンをはいている。下着は上下ともない。本来なら低地の村に連れて行って保護してもらいたかったが、啓示の数が多くなっている。早く進まなければ、取り返しの付かないことになるだろう。
「ついてくるのはかまわんが、アルコルは重要な使命を帯びている。これ以上、足は引っ張るなよ」
「分かっているわよ」
どこまでも容赦ないミザルに対し、メラクがキッとにらむように反論する。
先の戦いでよく分かった。アルコルは想像もできないような何かを背負っている。だから、それを見届けようと思った。それは興味本位などではなかった。メラクの心に、これまでにはない感情が芽生えてしまったのだ。
(…今さらこんな気持ちになってしまうなんて…困ったものだけど、仕方ないよね)
今までいじめていた男の子。その人に守ってもらって、優しい言葉までかけてもらったら……。
(夕べ寝た時は、襲われていないことに安心したけど、もう襲われてもいいわ。もしそれでアルコルが許してくれるなら……)
そのくらいの気持ちになっている。この旅が何日かかるか分からないけど、最後まで見届ける。その後は――また身勝手と言われそうだけど、自分の気持ちを告白しよう。もちろん、これまでの罪を謝ってから……。
3人は無言で道を進んでいく。時刻は昼を過ぎた頃だろう。歩きながら、食料をかじることにした。行儀は悪いが時間が惜しいのだ。
「うーん、少し足りないなあ」
ミザルが腹を撫でる。もともと2人分の食料を持ってきていたのだが、メラクが加わったために減るのが早い。やむなく、少し節約して食べるようにしている。
「どうもごめんなさいね」
メラクはムッとした。確かに足を引っ張っているのは事実だが、ここまで言われるとさすがに腹が立つ。
「2人とも、けんかしないでよ」
アルコルが困惑ぎみに諭す。3人の中では一番年下なのに、妙なものだ。
(アルコル、少し大人っぽくなったのね…)
メラクはアルコルをちらっと見た。女の子のような顔立ちはそのままだが、どこか精悍な雰囲気が漂う。メラクは胸に手を当てた。
(どうしよう、気持ちがどんどんふくらんでいく…)
まさか、アルコルにこんな気持ちを持つなんて……いじめていた日々を後悔した。すると、果物がなっている林に着いた。
「ミザル、メラク、見て! 桃や梨がなっているよ! もらおうか!」
アルコルは木に登り、果実を数個もぐ。熟していておいしそうだった。2人に渡すと、アルコルは座り込んで食べ始める。
「おいしい!」
無邪気な笑顔がかわいい――こいつ、今までこんな表情見せてくれたことなかったな。果物が好きなのね。
メラクがそんなことを思いながら桃の皮をむいてかじりつくと、ミザルが聞き捨てならない言葉を発した。
「おいしいな。アルコルの得意なドライフルーツにしてもいいかもな。そうだ、ベナちゃんと一緒に来たらいいよ」
ベナちゃん――!? 誰よ、それ……。
「えー、でもここまで来るのには危険だよ。狼やら吊り橋やらさそりやらあるし…。この前だってベナは怖い目に遭っているからなあ」
「君が守ればいいじゃないか。この旅が終わったら二人で来なよ。君たちはドライフルーツ作りが趣味なんだから、いい機会じゃないか」
え、誰? 誰なの? 共通の趣味がある人? そんなの聞いていない……。
「ね、ねえ……」
メラクがおずおずと尋ねる。
「ベ、ベナちゃんって誰?」
顔を真っ赤にして泣きそうな顔のメラク。きょとんとするアルコルをよそに、ミザルがしれっと教えた。
「アルコルの彼女だよ。この前のキャンプで知り合ったんだ。相思相愛でかわいいカップルになったのさ」
メラクの目の前が真っ暗になった。そんな――いつの間に…?