蒼い空の下で愛を誓う〜飛行機を降りたパイロットはただ君を好きなだけの男〜
***
悠里の様子がおかしい。
このところ習慣になっていたアイコンタクトが全くない。
お互いタイミンングが合えば、と自然とするようになっていたがいつの頃からか俺は彼女の後ろ姿ばかり眺めていることが多くなっていた。今まで毎回とは言わないが、悠里の勤務にあたると乗客の案内を終え、飛行機がプッシュバックされる頃合いに振り返ってくれていたのにこのところ全く振り返る様子がない。あえてこの場にいるのを拒否しているかのようにそのタイミングになるとカウンターからいなくなっているような気になる。彼女にも仕事があるのだから彼女が振り返ってくれないと駄々をこねるようなことをしたくない。けれどどこか違和感を感じる。
旅行に誘った時は喜んでくれていた。メッセージのやり取りも欠かしていないし、喧嘩になるような覚えもない。それなのに何か気になる。
なんだろう。
今日はベルギーからメッセージを送るとすぐに既読になったのですぐに電話をかけてみた。既読になった今ならきっと電話も出てくれるだろうと思ったから。
電話に出た彼女は少し鼻声で、から元気。何かあったのかと聞いても話してくれる様子はない。話をそらされてしまい何も聞き出すことはできなかった。
きっと何かがあったのだろうが、遠く離れたところにいる俺にはどうすることもできずもどかしい。
今まで付き合ってきた人にはこんなのを感じたことはない。そもそも電話をするなんてしてこなかった。
彼女にだけは俺の今までの恋愛が通じない。
気になって仕方ないが、遠く離れたここでは何もできない。彼女を抱きしめに行くことも叶わない。
ただ、早く会って抱きしめたい。

俺は不本意ではあるが結城に連絡をとった。あいつは船上パーティーの時から俺が彼女に気があると知っている。そして唯一付き合っている事実を知っている人間だ。悠里の様子を見ていてほしいと頼んだ。
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