狂気のお姫様
困った。

非常に困った。

何回考えてもここから抜け出せる案が浮かばない。


一方羽賀愁、いや、愁さんはそれはそれは安眠なさっている。もうスピスピいってるもん。ガチで寝てるもん。ていうか寝顔天使すぎないか。


「…」

「ス-…ス-…」

「…」




…とりあえず写真でも撮っておくか。




しょうがない。私の太ももの貸出料はテメエの寝顔1枚でチャラにしてやろうじゃないか。

と思いながら無音カメラでパシャリ。



「…!!!!」

そして無言で悶えた。


だってめちゃめちゃ可愛いんだもん。え、なにこれ。犯罪級なんだけど。

あとで小田に見せてやろー、とか思ってたけど門外不出にすべきだな。死人が出る。





「…」

「ス-…ス-…」

「…」





いや暇!!!!!

とりあえず数十分が経った。この人いつまで寝る気?今放課後だよね一応?帰りたいんだけど。

と思いつつ何故か起こす気にはならない。

ていうかなんで膝枕なんてしてんだよ本当に。

何度考えてもこの状況になった意味が分からなくて、きめ細かい肌とふわふわの頭をジーっと見つめる。


触っていいかな。それはさすがに命知らず?さっきまであんなに怖がってたのにって?それはそれ。これはこれ。

こんなに寝てるんだから起きないと思うんだけどな。


そぉーっと、髪の毛に手を近づける。


♪♪♪♪

「ひぇっ!!!」

いきなり無機質な音が教室に鳴り、思わずヘンテコな声が出る。


その音でうっすら目を開けた愁さんは、自分のポケットから携帯を出し、眠そうに耳にあてた。


「なに」

少し不機嫌そうだが、寝起きなのであまり怖さはない。ていうか触ってなくて良かった。殺されるところだった。タイミングが良すぎて狙ってるのかと疑えるほどだ。人間、あんまり調子に乗ると痛い目を見るな。


「は?知らね」

バチッと愁さんと目が合う。

1回キョトンとした顔を見せた愁さんだったが、すぐにあの無表情に戻った。


「お前が行け」


いや!!!絶対この人!!!私に膝枕されてること忘れてただろ!!!!!!


「面倒」

愁さんの眉間に皺ができる。

電話の相手は声が大きいのか叫んでいるのか、何を言っているのかは分からないがこちらまで聞こえてくる。


「アホか」

愁さんの手が私の髪に伸び、髪の毛をくんっと引っ張られる。

なんだ、という意味を込めてムッと顔を顰めるが当の本人は素知らぬ顔で、そのままくるくると私の髪の毛で遊ぶ。


「俺関係ないし」


なんだろう。

電話の相手が可哀想に思えてきた。

さっきから答える言葉は一言のみ。しかも『なに』とか『知らね』とか『面倒』とか、私だったら泣くな。


「もう切る」

しまいにはこれだ。もうちょっと相手してあげてもいいんじゃないか、と相手を不憫に思う。




「俺忙しい」

大嘘!!!!!!!!

あんた寝っ転がって私の髪の毛で遊んでるだけじゃん!!!何が忙しいだよ!!

なんか呼ばれてんだろ!行けよ!

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