狂気のお姫様

第4節 心もとない折り畳み傘

結局、あのあと愁さんをズルズル引き摺ったものの、割とすぐに解放してくれた。女子たちの視線は相変わらず刺さっていたが、誰も話しかけてこようとはしなかったので、ただ見られている状況だった。

あいつら鬼だ。

そしてその日、長谷川さんの彼女事件のことを小田に伝えるのをすっかり忘れていた。


「まじでか」

ので、今伝えた次第である。

ゴンッ

目の前で頭を抱えた小田は、そのまま机に突っ伏した。今まあまあすごい音したけどこいつ頭大丈夫か?


「これで小田も仲間入りだな」

小田の後頭部をぺしぺし叩くと「うぅ、くそ…」と唸り声をあげている。

「と言ってもバレないんじゃないかと思うけどね」

「でも彼女だぞ彼女。『彼女』という言葉は彼らのファンをハイエナにするには充分すぎる言葉だ」

「そんな大袈裟な」

「なんでだ…なんで私の姿が見えてたんだ…」

とうとう透明人間じみたことを言い出す小田。お前はただの人間だぞ。

「諦めろ」

だがしかし、イバラの道をとことん避けるこの女、何かを模索している様子。


「私こそ髪型変えようか」

「逆に怪しいぞ」

「ていうか、佐々木さんと長谷川さんに会ったときに『こないだはちゃんと帰れたか?』とか言われて墓穴掘られそうで怖い」

「あ、それはめちゃめちゃ分かるかも」

「あ、そうだ。彼氏いるんだから素直に彼氏いるって言えばいいんだ。そうしよう」


うんうん、と自己解決する小田は「これで一件落着じゃん」と何故か安心している。

まぁ、彼氏がいるとしても相手は天だからな。そこで『あぁそうなんですか』と女たちが引き下がるとは思えないが。

まぁいい。しょうがないから夢を見させておいてやろう。




「で?」

「?なんだよ」

もうさっきまでの後悔はどこへやら、頬杖をついていつもの小田。


「今日は何があるんだよ」

「あー」

「また面白いことしようとしてんだろ」

「こっちは別に面白くてやってるわけじゃないけど」

「え、そうなの?」

「え、そうなの?じゃないわ」

「まあまあ、もったいぶらないで教えろよ」

「ある程度想像はついてるんだけどな。まぁ、お楽しみだな」

「えー」



本日、次の授業をサボろうと思ってるので、小田にノートをお願いしたのだ。なので、何かあるんだろうと小田は興味津々。

何故今日なのかというと、動きがあったから。

前に男女軍団から奪った携帯や、あの出会い系のサイトから、いろいろなグループのトークが見れるようになった。もちろんハッキングして。

いや、携帯に関してはアカウントをのっとったに過ぎないのでハッキングとはまた違うが。

みんなよく会話してくれるよな。本当に。

本人に知られているとも知らずさ。

ちなみにこの前サイトに仕掛けたウイルスだが、この学校の生徒にも何人か引っかかっていた人がいた。しばらく噂になっていたみたいだ。

肝心の奴だが、やはり尻尾を出さない。違う携帯で入っていたらしく、その携帯にウイルスが入り込んだものの、誰も奴があのサイトを覗いているなんて分からない。

頭がいいんだか悪いんだか分からないな。

またしばらく泳がせておいて、雑魚でも倒しておくか。
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