狂気のお姫様

第2節 純粋な指摘

あのあと、ちゃんと解放されたものの、なんだかすごく疲れたような気がする。

屋上を出て階段を降りながら時計を見ると、昼は完全に過ぎていて、どれだけ寝てたんだよ、と自分を恨む。




それにしても…、

多分あれは喧嘩したあとだ。

他の4人は確定とまではいかないが、陽ちゃんは絶対そう。人にはそれぞれ喧嘩したあと特有の雰囲気があるのだ。こうだ、とハッキリとは言えないが、陽ちゃんが喧嘩したあとはなんとなく分かる。

彼らに挑もうとする奴らは、やっぱりたくさんいるみたいだ。

ただ、みんなケロッとしてたので、それほどでもなかったのだろう。

あのままあそこにいるのは場違いだったから、早めに抜け出せて良かった。



「え〜、そうなの〜?」

ふと階段の先から女の声が聞こえる。

こんなところ、人が来ないはずなのに……

おかしい。



女は男と話しているみたいで、遠くからでも猫なで声だと分かる。


「えー!私も行こーっと!」


そして近づくにつれ、この声に聞き覚えがあることに気づく。



嘘だろ…。



2人の姿が見えはじめ、女の顔をハッキリ認知した瞬間心の中で項垂れた。


「あ」

「どうしたの?」


先に私に気づいたのは隣の男。グレーアッシュの髪の毛に、黒縁のメガネ。顔は整っている。が、メガネをかけているせいか、まじまじと顔を見ないとそれが分からないだろう。

そしてその男の視線を辿り、私をその目に映した女は、明らかに顔が強ばった。



「律ちゃん?」

「あー、どうも」


そう、愁さんの『誰?』事件以来、久しぶりの鹿島杏奈ですね。



適当に挨拶をするが、さてこの状況どうしたものか。

この階段を降りてきたということは、屋上に行っていたことは確実にバレている。

いや、行ってたんじゃなくて連れてかれたんだけどな。



「屋上行ってたのー!?」

わざと驚く振りをする鹿島杏奈は、いつも通り役に忠実。


「行ってたというか、連れて行かれた」

とりあえず本当のことを言っておこう。私の意志で行ったわけじゃないからな。


「えー?誰にー?」

その語尾を伸ばす喋り方、腹立つな。


「愁さん」

短くそう答えると、一段と顔が強ばった。

「へぇ〜そうなんだぁ」
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