狂気のお姫様


「見合いなんて、一般人でもやるからな。それと同じだ」


確かに。拉致やら誘拐やらと違い、お見合いとなるとプラスの要素が多い。


「それで?」

「成瀬には内通者がいる」

「?」

「そいつが繋がってんのは、恐らくこないだ俺らが潰した荒木の後ろにいる組だ」

「なんかジローさんが言ってたな」

「組の動きが悪い。中から壊そうとしてんのかと思ったがどうやら違う」

「ふぅん」

「東堂が成瀬を潰すよう、仕組んでるらしい」

「はっ」


なんだって?

そんなことが可能なのか。

東堂はもちろんデカいが、成瀬だって相当な組だ。そこがぶつかるように仕向けるだなんて…。


「そう簡単にはいかねぇよ」

だよね…?

「だから荒木を潰して先手をうった」

「それが縁談なわけ?」


もっとマシな方法あったろ。


「俺も渋ったんだがな、なにせその組の若頭がお前に縁談を申し込む手筈らしい」

「は?」

「東堂の娘がどんな奴かは知らないが、アホだったら今までの苦労が水の泡だ」

「おい」

「というわけで」

「先に私にお見合いを持ち込んだと」

「まぁ、ただのアホではないようだが」


ふぅん。なるほどねぇ…。

まぁ結論を言えば。


「話が壮大すぎてついてけない」

「お前さてはアホだな」

デジャブ。


「なんなの。もう一件お見合いの話がくるわけ」

「うちが仕掛けたの見て今頃焦ってるだろうからなぁ、すぐにくるんじゃねぇか」

「ジローさん大噴火じゃん」

私のこと大好きだからなぁ。

「最初からそのつもりで言えば良かったのに」

こんな演技みたいな回りくどいことしないで。

「東堂次郎が本気で怒り狂ってるところを見せた方が本当っぽいだろ。誰が敵か分かんねぇしな」

どうやらその敵は一筋縄ではいかないようだ。


「ま、大まかに言うとそういうことだ」

目の前の男はカップを置くと、重たげに腰をあげる。


「え」

「携帯貸せ」

そう言うと、携帯を奪われる。

「どんな奴らかは知らねぇが東堂にも入り込んでる可能性もある。お前だって無意味に組の奴らをかち合わせたくねぇだろ」

「まぁ」

「だから協力しろ」

「なんだか利用されてる気がするのは気のせいか」

「黙ってケーキ食っとけ」



返された携帯を見ると、『成瀬千秋』の名前が追加されていた。

……腹が立つから千秋ちゃんと呼んでやろう。
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