狂気のお姫様
『──ランダムに配られているハンカチの内側に、バツ印が書かれている人がターゲットとなります』
炎天下の運動場。
本当にそれは体操服か?と思えるぐらい服を着崩してアナウンスを聞く不良たち。
赤、黒、白のハンカチ。
無機質なアナウンス。
「何個ぐらいあるんだろうな、バツ印」
と小田が耳打ちしてくる。
ひとつのチームで大体300人程度だと思うので、バツ印が書かれているのは10%とか?30人ぐらいが妥当だとは思うけど。
「それを言わないのが醍醐味っぽいね」
「性格悪いよな」
「分かる」
ゆるゆると始まり、ゆるゆると競技が終了していった今日の体育祭。
ちなみにリレーは学年1位で、四人五脚は最下位だったので、小田を死ぬほどいじったところである。
ところどころ乱闘っぽいのはあったものの、普通の高校の体育祭ってこんな感じなんだろうなぁと思えるぐらいには平和だった、と思う。
まぁそれはいいのだ。
体育祭なんて、女子の見せ場はほとんどないと思ってる勢なので、無難に競技を遂行してせっせと日焼け止めを塗っていればいいのだ。
しかし、問題はこれからである。
昨日話していたシークレット競技の内容があかされた。
つまりこういうことだ。
自分のチームの色のハンカチがそれぞれ配られているが、そのハンカチにバツ印が描かれている人がターゲットとなる。1チーム何人にそのバツ印があたっているかは不明。
敵チームのターゲットを見つけ、ハンカチと共にその人自身を広場に連れてこなければならない。それでポイントが加算されていく。
ただし、バツ印が描かれていない人を連れてきたらポイントはマイナスとなる。
競技場所は、運動場を含め、校舎も入るが、鍵が閉まっている教室は範囲外となる。
「連れていくってなかなか…ハードじゃない?連れて行く側も行かれる側も」
小田の頬が引き攣る。
「だから団体で動かなきゃいけないかもね。まぁ団体で動いてたら、その中にバツ印いますって言ってるようなもんだけど」
「乱闘じゃん」
「だから『命までとられるな』でしょ」
「無理この学校……」
「一人で動いてたらバツ印ないんだなーって分かるからバツ印がない人は気持ち的にも楽だと思うけど」
「そうだな!終わるまでダラダラしておけばいいんだもんな!」
周りの反応も薄いので、思ったほどターゲットの人は少ないのかもしれない。ちなみに私はターゲットではないから、無地の赤色のハンカチをズボンから半分だけ出してひらひらさせている。
「小田ー、どこで時間潰す?」
「……」
「小田?」
「……」
1時間暇だなぁ、なんて呑気なことを考えていたのだが、小田からの返事はない。
もうダラけてやがるのか、と小田を見ると、ハンカチを見て固まっている。
心做しか顔も青く……、
「いやまさか……」