元使用人の公爵様は、不遇の伯爵令嬢を愛してやまない。
 その後、二階にあるバスルームに向かったアンジェリカは、ルカナに髪も身体もピカピカになるまで磨かれた。
 誰かに身体を洗われるなんて久しぶりだったアンジェリカは、最初は恥ずかしさもあり戸惑っていたが、次第に慣れていった。
 地下室にはシャワールームや洗面所もついていたが、狭くて使い心地が悪かった。
 当然、この屋敷ではそんなはずがなく、広々とした綺麗なバスルームに、アンジェリカは嬉しくなった。
 ルカナに身体を拭いてもらったアンジェリカは、バスルームの続きになっている衣装部屋に移動すると、ドレスの多さに驚いた。
 色やデザインも様々な衣装が、広い部屋一面を、埋め尽くすようにずらりと並んでいる。
 伯爵家よりも品揃えが豊富なのは、一目瞭然だった。
 アンジェリカは自分で選ばず、ルカナに任せることにした。
 こんな大量のドレス、選んでいるうちに日が暮れてしまいそうだ。
 アンジェリカはドレッサーの前に座り、ルカナが戻ってくるのを待った。
 楕円形の大きな鏡に、アンジェリカの白いバスローブ姿が映る。
 昨日、ミレイユにぶたれた頬は赤みが引き、綺麗になっていた。
 少しすると、ルカナが両手いっぱいに、ドレスや装飾品を抱え戻ってきた。
 アンジェリカが立ち上がると、ルカナは身支度を始める。
 衣類の着せ方やコルセットのつけ方、紐の結び方まで、実に手際よく進めてゆく。
 着替えが終わると、質の良い化粧水や美容液で肌を整え、ルカナは丁寧に、アンジェリカに化粧を施していった。
 そして数分後、アンジェリカから少し離れたルカナは、その全容を確認した。
 
「うわぁぁ……」

 自分で選んでおきながら、アンジェリカの完成形にため息をついてうっとりするルカナ。
 もう終わったのかしらと思ったアンジェリカは、前にある楕円形の鏡を見た。
 すると、そこに映っている自身の姿を見て驚きの表情をした。
 赤い薔薇のような鮮やかなドレス、袖は白いフリルになっており、裾には金の刺繍の花が幾重にも折り重なっている。
 アイシャドウは控えめはブラウン系で、チークとルージュは、コーラル系で統一されていた。
 アンジェリカの髪や目の色を活かした、気品溢れる女性らしい装いである。
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