年下男子を好きになったら 〜戸惑い女史とうっかり王子の、なかなか始まらない恋のお話〜
「……と、言う訳で田中君が可愛らしくて辛い!心臓に悪い!!でも、ほんと恥ずかしながらときめいてしまう!!!」

このままでは田中君を襲ってしまう日が来そうで恐ろしい。
溢れんばかりのこの思いを伝えると、「田中の可愛さとか聞かされても、あいつをそんな目で見たことないからわかりませんて」と呆れたような高橋君から返ってきたのは、なんとも投げやりともとれる答え。

「じゃあこの際ですから、試しに襲ってみちゃえばいいんじゃないですか?」
「お、襲ったらダメでしょ!って言うか適当な回答しないでよ!」
「いや意外とね、ただの同僚だと思ってた女子から突然『一回だけでもいいから!』とか言われて襲われてみるのも新鮮な感じがして、中々興奮するもんですよ?」
「……それ、高橋君の個人的見解でしょ?私の田中君と一緒にしないでよ」

と、言うか高橋君はそんな経験があるのだろうか。
しれっと衝撃の爛れた性事情を告白されても困惑するばかりである。全くこれだから来るもの拒まずな男の子は質が悪い。

「そんなんだからチャラいとか言われちゃうんじゃないの?」

思わず口から飛び出した言葉は、心当たりがあり過ぎる高橋君を打ちのめすのには充分だった様子。

「俺、さっき同じ事あの娘に言われてきたばっかです」

そう言うと、「誠実さってどうすれば醸し出されるものなんだろう」しょんぼり肩を落とすのだった。

高橋君がついさっき彼女に負わされたというその傷は、今までの行いがブーメランとなって返ってきたものだから自業自得なんだろう。けれど、ここまで落ち込まれるとそれはそれで気の毒になる。
傷を抉るつもりはなかったので、そんな予想外の反応には慌てしまう。

「何かいい案が出るかもしれないから、ちょっと話そうか?」

不用意な言葉を口にした罪滅ぼしだ。
急遽この可哀想な弟みたいな男の子の為に、私は専用の恋愛相談窓口を5分ばかり開くことにするのだった。
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