ベイビー•プロポーズ
美郷から視線を移した黎は、少し目を見張りながらじーっと優弥のことを見つめ始めて。
「……男」とぽつり零した。
「あ、黎、紹介するね。同期の美郷と優弥です」
「……ゆうや」
「あははっ、黎くんってば伊藤にヤキモチ焼いてるんだ~」
「まじ?俺ら名字が一緒だから下の名前で呼び合ってるだけだからね。黎くんのライバルじゃないから安心して」
軽い笑顔を見せる優弥の言葉にはっとしたように肩を揺らした黎は「……すいません」と腰を折った。
「わざわざ来てくれて、ありがとうございます」
「いえいえ~萌葉の言う通り、その服装超似合ってるよ!ね、萌葉~?」
目元を三日月に変え、にやにやと口元を緩める美郷を肘で小突こうとした時。
「――獅子堂くん!」
透き通ったソプラノが少し離れたところから聞こえた。
その可愛らしい声のする方へと顔を向けると、くるりと巻かれたツインテールの毛先とふりふりエプロンを揺らすメイドが、小走りでこちらにやってきた。
確かこの子、さっき教室から私たちのことを覗いてた1人だ。
周りに全く目を向けず一直線に向かってきたその子は、黎の目の前に立つと両腕を伸ばした。
「獅子堂くん、そろそろ私たちの当番の時間だよ?」
黎の腕を握りながら首を傾げ、甘えたような声を出す彼女は女の私から見ても可愛くて。
心が鉛色の靄で覆われ始めた時、ふと目の前の彼女に見覚えがあることに気が付いた。