ベイビー•プロポーズ
もらった観葉植物を置きにデスクへ戻ると、隣に沢城先輩の姿はなかった。
どんな仕事もそつなくこなすあの沢城先輩が、初心者並みの凡ミスをするなんて……それも2件も。珍しいどころの話じゃない。
顔色が悪いって言ってたし、もしかして体調が良くないのかな?
今週は家でも職場でも心ここに在らず状態。周りを気にかける余裕なんてなかったから、常に隣にいた沢城先輩の異変にさえ気付くことができなかった。
プライベートを引き摺る社会人失格の私とは違って、沢城先輩には正当な理由があるはず。
もしかしたら沢城先輩には風水が効くかもしれない。
気休めのミニサボテンを先輩のデスクの右側に置き、部長にもらった500円玉を握りしめた私は休憩スペースへと足を進めた。
「ねぇねぇ沢城くん。彼女と別れたって聞いたんだけど」
「……誰にすか」
「マーケ部の後輩の子。沢城くんと安藤くんが喫煙所で話してるのが聞こえたんだって。ねぇ、本当なの?」
「さあ」
「もしも沢城くんが今フリーなら、私が彼女に立候補したいな〜って思って。私も2ヶ月くらいフリーなのよね」
…………気まずい。
1つ上のフロアへエレベーターで降り立ち直進し、自販機の並ぶ休憩スペースまであと少しというところ。角を曲がる直前で聞こえてきた声に、思わず足を止めた。