続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語
父親の左腕を取り、ゆったりとした足取りで進む美愛。彼女は、両側に座る人々に微笑みながら、目で挨拶を送っていく。

 
新しい家族たち、道上夫妻、ノーリス夫妻、そして花村家のみんな。その誰もが、温かい笑顔で彼女を迎えていた。

 
雅の母・良子は、かつてお店で出会った優しい少女が、息子の花嫁となってくれたことに、胸いっぱいの喜びを噛みしめていた。


美愛の母・久美子は、あの日小さく生まれた娘が健康に育ち、最愛の王子様と一緒になれたことに、喜びの涙を流している。

 
感動に包まれた姉の圭衣と葉子は、それぞれの恋人、大和と仁にそっとハンカチで涙を拭ってもらっていた。

 
ほんの少し前まで、母と姉に反対されているのではないかと不安に思っていた美愛。


けれど今、こうして笑顔で見守ってくれている家族を前に、胸の奥から安心が広がっていく。

 
そして──


その視線の先には、白いタキシードを身にまとい、笑顔で立つ雅の姿があった。

 
やがて、バージンロードの奥へとたどり着いた美愛とジョセフ。美愛の手を雅に預ける前に、ジョセフは娘と正面から向かい合う。

 
「I love you, my sweet little angel」

 
赤くなった目を隠さず、彼はそっと、美愛の額にキスを落とす。

 
言葉を返そうとすると、涙がこぼれてしまいそうで。美愛は片膝を曲げ、深くカーテシーをして、父に敬意と感謝を捧げた。

 
ジョセフから美愛の手を受け取り、雅はこの日、初めて彼女の隣に並ぶ。2人で、誓いの言葉が記された台紙を手に取った。

 
声を揃えて、静かに読み上げる。

 
「本日、私たちは皆様に見守られながら結婚できることを、大変嬉しく思います。今日という日を迎えられたのは、私たち2人を支えてくださった皆様のおかげです。

私たちは今朝、3月14日に入籍しました。
2人の絆をさらに深めるために、本日皆様の前で夫婦の誓いをいたします。

これからもお互いを尊敬し合い、共に人生を歩んでいけることに感謝しながら、明るく温かい家庭を築いていき、生涯にわたり支え続けることを誓います。

──3月14日 新郎 西園寺雅 新婦 西園寺美愛」

 
続いて、指輪の交換が行われる。

 
結婚指輪は、雅がジュエリーデザイナー・紫道に依頼して用意した、プラチナゴールドのシンプルなデザイン。


美愛が婚約指輪と重ねづけできるよう、繊細に設計されていた。

 
まず、雅が美愛の左手薬指に指輪をはめる。

 
「一生、美愛ちゃんだけだから。これからも、2人で共に歩んでいこう。愛してる」

 
美愛は、微かに震える指で、雅の左手にそっと指輪をはめ返す。

 
「雅さんに出会えて、本当に良かった。約束を守ってくれてありがとう。あの日からずっと、愛しています」

 
そして2人は、そっと唇を重ねた。

 
テントの中に、拍手の音が広がっていく。それは、静かであたたかな、幸福の音だった。

 
この瞬間。


かつて交わした、あの日の小さな約束が──
ようやく、叶えられたのだ。

 

THE END

 

*本作はフィクションです。登場する名称・団体・商品などは架空であり、実在のものとは関係ありません。
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