The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
ある日の、昼休みのこと。
いつも通り、エルスキーやアシベルと学食で昼食を摂って、教室に戻ってきたとき。
何だか、教室内が騒がしかった。
騒がしい原因は、教室の隅に固まっている女子生徒達にあった。
「ちょっと。これ頼んでたのと違うじゃない。レモンティー買ってきてって言ったでしょ?」
「…ごめんなさい…。その、冷たいの…売り切れてて…」
「は?だからって何でミルクティー買ってくる訳?馬鹿なんじゃないの?」
と、いう会話が、聞き耳を立てるまでもなく聞こえてきた。
見ると、一人の気弱そうな女子生徒が、気の強そうな女子生徒数名に囲まれている。
彼女達の前には、ジュースの缶が並んでいた。
…どうやら、あの真ん中の気弱そうな女子生徒がパシられたようだな。
高校生にもなってパシリなんて、あるんだ。
買ってきたは良いものの、注文とは違うものを買ってきたといって叱られているようだ。
そりゃそうだ。レモンティーとミルクティーは別物だよ。コーラとミルクセーキくらいの違いがある。
冷たいのがないなら、せめて温かいレモンティーを買ってくれば良いのに。
「ほんっと使えない奴。あんた存在意義あるの?」
「…ごめんなさい…」
怒るのはごもっともだと思うが、レモンティーの代わりにミルクティーを買ってきたくらいで、存在意義を疑われるとは。
別にあの子、レモンティー買う為に生まれてきた訳ではないと思うのだが。
「ほら、とっとと買い直してきな」
「え、で、でも…。もうすぐ授業が」
「だから急げって言ってんの。大体あんたが違うもの買ってくるからでしょ?自業自得」
「早く行けよ、ブス」
ミルクティー少女を取り囲むクラスメイトの一人が、げしっ、と彼女の膝の辺りを蹴り上げた。
あいつ鬼畜だな。
ミルクティー少女は涙目になっていた。
「またやってるよ、あいつら…本当懲りないなぁ」
「女子こぇぇ~…」
俺と一緒に、その現場を横目で見ていたエルスキーとアシベルの感想が、これである。
近づきたくないってのがよく分かるな。
すると、そこに。
「ちょっとあんた達、その辺にしときなさいよ」
ミューリアが、彼女達の間に割って入った。
「弱い者いじめなんかして…恥ずかしくないの?」
「…ちっ」
ミューリアは我がクラスの女子の中ではリーダー格。彼女が直々に止めに入られたら、従わない訳にはいかなかった。
ミルクティー少女を取り囲んでいた女子達は、蜘蛛の子を散らしたようにその場を立ち去った。
さて、その場に取り残されたミルクティー少女。
「あ、あの…あ、ありが…」
ミューリアに礼を言おうとした彼女は、しかし最後まで言うことは出来なかった。
「あなたもね、言いなりになってちゃ駄目よ。びしっと言ってやりなさい。言うこと聞くからあいつらが付け上がるのよ」
「…」
「良い?今度何かされたら、毅然として追い払うのよ?」
そんな風に言われては、ミルクティー少女は何も返す言葉がなかった。
彼女は小さく頷いて、そして逃げるように教室から出ていった。
彼女の小さな背中を見て、ミューリアは呆れたように、エルスキーとアシベルはほっとしたように見送って、そして次の瞬間には、何事もなかったかのように自分の関心ごとに戻った。
そしてそれ以外のクラスメイトは、この一連の騒動に対して、視線を向けもしていなかった。
これが、このクラスの実態であった。
いつも通り、エルスキーやアシベルと学食で昼食を摂って、教室に戻ってきたとき。
何だか、教室内が騒がしかった。
騒がしい原因は、教室の隅に固まっている女子生徒達にあった。
「ちょっと。これ頼んでたのと違うじゃない。レモンティー買ってきてって言ったでしょ?」
「…ごめんなさい…。その、冷たいの…売り切れてて…」
「は?だからって何でミルクティー買ってくる訳?馬鹿なんじゃないの?」
と、いう会話が、聞き耳を立てるまでもなく聞こえてきた。
見ると、一人の気弱そうな女子生徒が、気の強そうな女子生徒数名に囲まれている。
彼女達の前には、ジュースの缶が並んでいた。
…どうやら、あの真ん中の気弱そうな女子生徒がパシられたようだな。
高校生にもなってパシリなんて、あるんだ。
買ってきたは良いものの、注文とは違うものを買ってきたといって叱られているようだ。
そりゃそうだ。レモンティーとミルクティーは別物だよ。コーラとミルクセーキくらいの違いがある。
冷たいのがないなら、せめて温かいレモンティーを買ってくれば良いのに。
「ほんっと使えない奴。あんた存在意義あるの?」
「…ごめんなさい…」
怒るのはごもっともだと思うが、レモンティーの代わりにミルクティーを買ってきたくらいで、存在意義を疑われるとは。
別にあの子、レモンティー買う為に生まれてきた訳ではないと思うのだが。
「ほら、とっとと買い直してきな」
「え、で、でも…。もうすぐ授業が」
「だから急げって言ってんの。大体あんたが違うもの買ってくるからでしょ?自業自得」
「早く行けよ、ブス」
ミルクティー少女を取り囲むクラスメイトの一人が、げしっ、と彼女の膝の辺りを蹴り上げた。
あいつ鬼畜だな。
ミルクティー少女は涙目になっていた。
「またやってるよ、あいつら…本当懲りないなぁ」
「女子こぇぇ~…」
俺と一緒に、その現場を横目で見ていたエルスキーとアシベルの感想が、これである。
近づきたくないってのがよく分かるな。
すると、そこに。
「ちょっとあんた達、その辺にしときなさいよ」
ミューリアが、彼女達の間に割って入った。
「弱い者いじめなんかして…恥ずかしくないの?」
「…ちっ」
ミューリアは我がクラスの女子の中ではリーダー格。彼女が直々に止めに入られたら、従わない訳にはいかなかった。
ミルクティー少女を取り囲んでいた女子達は、蜘蛛の子を散らしたようにその場を立ち去った。
さて、その場に取り残されたミルクティー少女。
「あ、あの…あ、ありが…」
ミューリアに礼を言おうとした彼女は、しかし最後まで言うことは出来なかった。
「あなたもね、言いなりになってちゃ駄目よ。びしっと言ってやりなさい。言うこと聞くからあいつらが付け上がるのよ」
「…」
「良い?今度何かされたら、毅然として追い払うのよ?」
そんな風に言われては、ミルクティー少女は何も返す言葉がなかった。
彼女は小さく頷いて、そして逃げるように教室から出ていった。
彼女の小さな背中を見て、ミューリアは呆れたように、エルスキーとアシベルはほっとしたように見送って、そして次の瞬間には、何事もなかったかのように自分の関心ごとに戻った。
そしてそれ以外のクラスメイトは、この一連の騒動に対して、視線を向けもしていなかった。
これが、このクラスの実態であった。