The previous night of the world revolution2〜A.D.〜
…何が起きたのか、一瞬考えた。

だが、考えるまでもなかった。

気づいたら、俺は床に倒れていた。

立ち上がれなかった。

俺は倒れたまま、ガラスが割れた窓の外を見た。

スナイパーだ。

狙撃ポイントになり得る場所なんて、この近辺にはないはずだ。

アジトをここに決めるときに、確認した。

とすると、相当遠くから狙撃している。

少なくともうちのスナイパーでは、到底ここまで届かせることは出来ないような場所から。

動かない的ならまだしも、相手は動いている人間。しかもピンポイントに俺の急所を狙って。

恐ろしく腕の立つスナイパーだ。

そして、目の前の女幹部。

この女は、押されている振りをして、俺をこの狙撃ポイントに誘ったのだ。

それだけじゃない。俺がこの部屋にいて、ここが狙撃ポイントになるということを、事前に調査した人間がいるはず。

一体どんな手段を使って、この情報を入手したのだろう。

そして何より恐ろしいのは、この舞台を作ったあの男。

まさか最初に会ったときから、こんな顛末になることを予測していたのだろうか。

成程、俺では敵うはずがない。

箱庭に生まれた人間が、そこから出ることを望んだのが間違いだったのだ。

でも…俺はあの腐った国ではなく、この場所で死ぬことが出来る。

憲兵局に公開処刑されるのではなく、これほどの強敵の相手をして死ねる。

それだけで…充分だ。

ただ一つ…一つだけ、我が儘を言えるのなら。








…救ってやりたかった、なぁ。



















「…カセイ…」

どうやら、手土産は持っていけそうにないみたいだ。






< 402 / 561 >

この作品をシェア

pagetop