【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
 そんなことを考えていると、不意にアパートの窓がコンコンと叩かれる。……誰? 少なくとも、私たち家族は近所付き合いをしていないから、ご近所さんという可能性は……いや、あるわね。お父様とお母様が何かをしでかしたのならば、クレームを入れにやってくるだろう。その尻拭いをするのは、決まって私。……もう、この生活も嫌になってきちゃった。

 恐る恐る私が窓の方に向かえば、そこには誰もいなかった。怪訝に思って周囲を見渡すけれど、やっぱり誰もいない。……気のせい、だったのかしら? そう思って引っ込もうとした時、不意に一つの真っ赤な箱が視界に入った。……綺麗にラッピングされている。まるで、プレゼントみたい。

「……なに、これ」

 小さくそう呟いて、私はその箱のラッピングを解いてみる。リボンと包み紙を解き、ふたを開けたら――中に入っていたのは、真っ青なドレス。触れただけでも分かるほど、その生地は高級なもの。驚いて私がそのドレスを広げてみたら――そのデザインに驚いてしまう。

「こ、れ……」

 それは、私が侯爵令嬢時代に好んで身に着けていたドレスのデザインと全く同じだったのだ。……というか、そもそもどうしてドレスがこんなところにあるのだろうか? ラッピングされていたということは、誰かへのプレゼントだと思うのだけれど……。

 そう思っていれば、ひらひらと一枚の紙が落ちてきた。それは、ドレスの間に挟まっていたよう。その紙を拾い上げて、私はそこに綴られている文字を目で追った。その瞬間――私の身体から血の気が引いている。

『エリカ嬢は、落ちぶれても可愛らしいね』

 綴られていた文字は、そんな文字だった。慌ててその紙を箱に放り込もうとすれば、箱の中にもなにやら紙のようなものが入っていることに気が付く。……怖かった。けど、人間は怖いもの見たさを抑えられない。だから、その紙を手に取ってみれば――そこには、たくさんの絵が描かれていた。その絵のモデルは――私自身。

「いやぁ!」

 なに、気持ち悪い! そう叫んで、私がしりもちをつけば誰かがこちらを見ているように感じてしまう。……怖い、怖い! 助けて、助けて!

「――お義姉様……!」

 助けを求めたい私は、無意識のうちにお義姉様のことを呼んでいた。……お父様でもなく、お母様でもなく、お義姉様を。
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