【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
翌朝、ふと目を覚ますとそこにはエドガーの姿があった。

「おはよう、アイリーン」
「お、おはようございます」

エドガーの表情はすっきりとしていて、アイリーンが起きるずいぶん前から起きていたことが伺える。

「体は大丈夫か?」
「……はい。少しだけ下半身が重たい気がしますが、大丈夫です」
「そうか。今日はゆっくり過ごそう」

 エドガーは言って優しくアイリーンの身体を抱き寄せた。エドガーからふわりと香る石鹸のような甘い匂いに昨日の熱が蘇ってくる。隅々まで体を暴かれてはしたない声を上げて……。
 アイリーンは恥ずかしさのあまりギュッと目を瞑る。

 エドガーはそっとアイリーンの髪を撫でつけながら、「幸せだ」と呟いた。

「わたしもです。エドガー様と結婚して妻になれて本当に幸せです。ただ……」
 けれど、アイリーンはまだ重要な務めを果たしていない。エドガーの後継者である跡継ぎを産まねばならないのだ。
「ただ、どうした?」

 エドガーは何事かとアイリーンの体から腕を離して顔を覗き込む。アイリーンはやわらかく微笑んだ。

(きっとエドガー様は義務のように子供をつくって産ませることを望まないはずだわ)

「エドガー様との子供が産まれたら、もっと幸せかもしれないですね」

アイリーンは単純にエドガーとの子供を望んだ。父と母になり、一緒に子供を育てていきたい。家族が増えれば、きっともっと幸せだ。

「俺とアイリーンの子供? そうだな、俺も欲しい」

 エドガーの顔がぱっと明るくなる。

「男児でも女児でもどちらでもいいが、不愛想な俺には似て欲しくない。アイリーンに似れば、きっと可愛いだろう」
「わたしは、エドガー様に似て欲しいですよ。芯が通っていて一途で心優しくて、強くてカッコいいわたしにとって最高の旦那様ですから」
「そ、そんなことはない」

 アイリーンの言葉にエドガーは照れくさそうな表情を浮かべた。結婚してもなお、褒められることには不慣れなようだ。

「だが、子供が産まれてもこの足では走って追いかけることができないかもしれないな……」

 エドガーの顔に一瞬陰が差したのに気付いて、アイリーンはにっこりと笑った。

「それなら問題ありません。わたし、走るのは得意な方ですので」
「そうか、頼もしいな」
「わたしとエドガー様はもう夫婦です。これから先もずっと、共に支え合って生きていきましょう」
「ああ、そうだな」

 エドガーは再びアイリーンの体を長い腕で抱き寄せた。

「今だってこんなに幸せなのに、子供ができたら俺はどうなってしまうんだろう。果たしてこれ以上の幸せに耐えられるんだろうか……?」
「わたしも同じ気持ちです。今もこんなに幸せなんですから」
「いや、まだ足りない。この先、もっと幸せにするから覚悟してくれ」

 エドガーの腕に力がこもった。

「愛してる、アイリーン」

 おでこにチュッと甘い口づけが落ちてくる。
アイリーンは愛するエドガーの温かな腕の中で、これ以上ないほどの幸せと喜びを噛みしめたのだった。

                                   【END】
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