虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~
「国王から話があった通り、正式に我が妻として迎えようと思っている」
…………。
「それに際して、式典も執り行うつもりだ。そこで近隣諸国への発表を予定している」
………………。
「異論はないか?」
……………………え? 殿下は今なんと……??
「あ、ありますっ……!!!」
ぽかんとしていた私が急に前のめりになったので、レオナルド殿下が初めて驚きのような表情を浮かべた。
「異論、あるのか……」
「ありますっ! 何故私は処刑されないのでしょうか!?」
私の言葉に目を丸くするレオナルド殿下。
「は? 何を言っているのだ? 君は」
「私はアレスとルプスの和平のためにこの国へとやって参りました。人質や奴隷として扱われるはずの存在なのです! それなのに……、」
この国に来てから、優しい人達ばかりだ。ゼウラウス国王に、ミラ王妃。リビアに、きっとレオナルド殿下も。
余所から来た私なんかに、みんな優しくしてくれる。
そんなことってあるだろうか……?
自国でも愛されなかった私が、ルプス帝国になんの利益ももたらしていない私なんかが、どうして大切にされるというのか。
驚いたように目を瞬かせていたレオナルド殿下は、静かに口を開く。
「君がどうしてそのような卑屈な考えばかりしてしまうのかはわからないが……。先程も言った通り、私は君を妻に迎えたいと思っている」
「……っ、でも!」
「父の言った通りなのだ」
「え……?」
レオナルド殿下の氷のような表情が、少し溶けたような気がした。
殿下は私から少し視線を背けると、ぽつりぽつりと話し出す。
「君が私の妻となる日を、ずっと待ちわびていた」
私は思わず眉間に皺を寄せる。
そんなわけ……。
「そんなはずがないと思っているのか?」
まるで心を読まれたようにそう言われて、私の身体がびくっと跳ねた。
「君は憶えていないのだろうな……。あれはまだ、私が八歳の頃だ」
そうレオナルド殿下が話し出したのは、遠い日の思い出だった。
*