虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~
数時間馬車に揺られ、ルプス帝国に到着する頃には辺りはすっかり暗くなっていた。
アレス国から着て来たぼろぼろの分厚いコートが少し暑く感じるくらいには、ルプスはとても温暖な気候だった。
ルプス帝国の中心である国王が住まう城へと到着し、馬車を降りた私はその目に映る光景に思わず目を見開いた。
ずらりと並んだ侍女や執事達が、私に向かって一斉に頭を下げる。
「ようこそ、クラリス・フォートレット王女」
「え、えっと……?」
衛兵らしき人々も集まっているが、皆一様に笑顔である。
これは、どういう状況……??
アレスから人質、あるいは生贄という認識でやってきたのだが、ルプス側の対応は私の想像の斜め上を行くものだった。
これではまるで、私が本当に妻として歓迎されているかのような……。
都合の良すぎる考えを、私は思い切り頭を振って追い払う。
いやそんなことあるはずがない。これは何かの罠だ。油断させて、その隙に私を殺そうとしているに違いない。ルプス側の何かの策略。絶対そうだ。
またアレスに不利な条件を出してくるかもしれない。そうなっては小さな国であるアレス国では太刀打ちできない。国民のためにもなるべく私が上手くやらなくてはならない。まぁ、私なんかでは足掻いたところで、何の役にも立てないとは思うけれど……。
生きる価値などない自分はどうなってもいい。しかし国民は守らなくてはならない。戦争となったとき、真っ先に命を落とすことになるのは衛兵や国民なのだから。
恐怖を唾と共に喉に流し込み、私は俯かせていた顔から視線だけを上げる。
すると一人の綺麗な侍女らしき若い娘が私の前へと躍り出た。
「クラリス様。お初にお目にかかります! 私、本日よりクラリス様の専属の侍女を務めさせていただきます、リビアと申します。身の回りのお世話や、その他諸々、私が担当させていただきます」
「え? あ、はい……」
私の消え入りそうな返事に、にっこりと笑顔を向けてくるリビア。
これは、なんの笑顔? 今からお前の命を奪っちゃうぞ? 的な?
優しく穏やかそうな見た目だが、きっと鞭や棒を振るい私を虐げるに違いない。
「それではこれよりこのリビアが、クラリス様を国王及び、王太子殿下の元へご案内いたします」
「こちらです」とゆったり歩いて行くリビアにくっつくように、私もその後を追う。
いよいよルプス帝国の国王、ゼウラウス国王と対面だ。
さて、何を言い渡されるだろうか……。
良くて監禁奴隷生活、悪くてその場で処刑かもしれない。
自然とごくりと喉が鳴る。
覚悟を決めなくてはいけない時が、もう目の前に迫っていた。