虐げられてきたネガティブ令嬢は、嫁ぎ先の敵国で何故か溺愛されています~ネガティブな私がちょっぴりポジティブになるまで~
出国の日。
その日はあっという間にやってきてしまった。
持ち物は使い古したお洋服と少しの小物。小さな鞄一つに入り切ってしまうようなものだけだった。
「クラリスお嬢様、お元気で」
見送りに来てくれたのは、数人の侍女達だけ。
お義母様やお姉様、お父様の姿は当然そこにはなかった。
「ありがとう、みんなも元気で……」
後ろ髪を引かれることもなく、私は城を出た。
「……さようなら、アレス……」
私の生まれ育った国。お母様と過ごした小さな国。
用意してくれた馬車に身を預けながら、私はルプス帝国に向かった。
気が付けばアレス国周辺を覆っていた吹雪を抜け、暖かな日差しが降り注いでいる。
小さくなっていくアレス国を見ながら、やっぱり何の感情も沸いてこなかった。
お義母様もお義姉様も、お父様だって私のことが嫌い。あそこには私なんかいない方がいい。その方が、みんな幸せなのだ。
これから私はどうなるのだろう……。
交渉のために使われた私が、ルプスでいい扱いを受けるとは思えない。
表向きは二国の懸け橋、友好関係のために嫁ぐことになってはいるけれど、人質や、あるいは奴隷として扱われることも覚悟しておくべきだろう。寧ろそれならまだいい。もしかしたら到着早々に殺されるかもしれない。いや、きっとそうに違いない。
だって、こんなにネガティブで虐げられていた第三王女の私なんかを、妻に迎えようだなんてそんなことあるわけがないのだ。
相手は軍事国家だ。死を覚悟するべきだろう。
「……私の命は、あと何時間持つのかしら……」
皮肉めいた表情を浮かべながら、自然と震え出す身体を抱えるように隅っこで丸まりながら馬車に揺られ続けた。