仕返しのつもりだったのに、溺愛されているようでなんだか幸せです
沙羅が北斗のマンションに着くと、なぜか60代くらいの女性が部屋で沙羅を待っていた。
その女性は沙羅を見るなり笑顔で駆け寄って来たのだ。
「まぁ、あなたが北斗坊ちゃまの奥様になられる沙羅様ですね。…何て可愛らしいのかしら。」
沙羅は戸惑い声を詰まらせた。
「…あ、あの…あなたは…どなたでしょうか?」
女性は笑顔で答えたのだった。
「私は北斗坊ちゃまの、ばあやをしていた、多岐(たき)と申します。今日は沙羅様のお世話をするよう言われて張り切って参りましたの。よろしくお願い致します。」
「あの…そんな…私なんかのお世話だなんて…申し訳なくて…」
恐縮する沙羅の手を取って多岐が話し始めた。
「北斗坊ちゃまが私にお願いごとをするなんて、今まで一度も無かったんですよ。だからきっと、沙羅様のことがとても大切なんですね。なんだか嬉しくって、張り切って来ちゃいました。」
沙羅が戸惑っていると、多岐は奥の部屋へと沙羅の手を引いた。
「沙羅様、こちらに必要と思われる日用品は用意してみました。足りない物はお申し付けください。」
沙羅はその部屋を見て驚いた。
そこは既に女性が住んでいるかのように用意された部屋になっていたのだ。
クローゼットには沢山の服も用意されている。
「あの…この洋服は…サイズとかは?」
多岐はその質問に待ってましたとばかり返事をする。
「大変失礼ながら、沙羅様のサイズは、太一様の奥様へ連絡してお召しになっていた服のサイズを確認済みです。朝一番で霧島家御用達の百貨店に持って来てもらいましたの。」
そういえば、着ていた服は洗濯してもらったことを思い出した。それに里香の服を貸してもらったがほとんど同じサイズと言っていたのだ。
さすが霧島家に仕えていたばあやだ。仕事も完璧だ。
歯ブラシや化粧品に至るまで全てそろえられているではないか。
強いて言えば、自分が使っていた化粧品などより、遥かに高価なものが用意されているのが分かる。