恋は揺らめぎの間に
慎司君は何か言いたそうだった。
「どうしたの?」
しかし、こちらに伸ばしかけた手を下ろしてしまう。
熱が上がっているのか、顔が赤い。咳も出始めて、苦しそうにしている。何でもないと再び横になる慎司君を見ていると、弱って耳も尻尾も垂れ下がった大型犬を思い出してしまった。
風邪をひいたりすると、誰かに傍にいてほしくなるけれど、慎司君もそうだったりするのかな…?
いや違う、ときゅうっとなる胸に手を当てる。傍にいてほしいのは慎司君じゃなくて、私の方だ。私が傍にいたいのだ。
「……私、少しだけここで課題してもいいかな?」
気づいたらまた口走ってしまっていた。
「や、やっぱり止めとく!」
慎司君は具合が悪いのに、何を言っているのか。今のナシ!と努めて明るく言って場を去ろうとしたが、
「いいよ。」
慎司君がそれを引き止めた。