恋は揺らめぎの間に
ごちそうさまでしたと手を合わせ、食器を片そうとする慎司君を制して寝るように促す。ちょっと食器を下げる間に敷布団を出す慎司君の腕を、ぐいっと引いた。
「ここはダメだよ慎司君! 寝室に行くよ!」
「い、いい…。」
いつもここで寝てるし、と首を横にぶんぶん振る慎司君。それはそうだが、薄っぺらい敷布団に病人を寝かせておくことはできない。
「まだ熱もあるし、体調悪いんだから、ベッドじゃないとダメだよ! それに、もともと慎司君のベッドなんだから!」
慎司君は渋々私に連れられて、ベッドに入ってくれた。
「飲み物はここに置いておくね。 何かあったら私、隣にいるから。」
「…バイトは?」
「夕方からなの。 夕飯は用意しておくから心配しないで。 顔、まだ赤いけど……」
おでこに触れようとした手を、パシッと払われる。
「…っごめん。 移ると、悪いから。」
慎司君はくるっと背中を向けて、布団に潜ってしまった。
「…私こそ、ごめん。」
馴れ馴れしかった…よね。
ズキンと痛む胸をぐっと押さえ、踵を返す。
一緒にいてくれるとは言ってくれた慎司君だけれど、なぜ一緒にいてくれるか、理由はわからない。私のことを好きだからいてくれるのか。押しに負けたからいてくれるのか。嫌々、いてくれるのか。肝心なことは何一つ、私達は話せていない。
「…静香!」
そっと部屋を出かけた時、慎司君がガバッと起き上がた。